【No1032】税制改正大綱 ~相続税等の財産評価の適正化~

令和8年度税制改正大綱において、相続税等の財産評価の適正化について発表がありました。既にVol.1028において税制調査会の見直し案が明らかとされており解説済みではありますが、新たに明らかとなった内容なども含め、改めて解説します。

1.改正趣旨

近年、不動産や株式などの評価額を圧縮する相続税の節税スキームが広く利用され、課税庁は財産評価基本通達6項に基づく課税処分を行うことなど個別に対応してきました。その後、令和4年最高裁判決をきっかけとしてマンション通達が発出され、分譲マンション等の区分所有不動産の評価については、一定の見直しが行われました。

しかし、一棟所有の賃貸用マンションをはじめとする貸付用不動産を利用したスキームはその後も継続的に行われ、評価通達6項による課税庁の個別対応が続いていました。このような対応について、納税者の予見可能性といった観点からの批判があり、評価方法の明確化が要請されました。

また、マンション等の「貸付用不動産」において、市場価格(時価)と相続税評価額(通達に基づく評価)との間に大きな乖離がある実態も踏まえ、課税の適正化を図ることが目的です。

この度の税制改正大綱では、対象となる不動産の取得時期や性質により、次の2つのパターンで評価方法が見直されます。

2.課税時期前5年以内に取得等をした貸付用不動産

(1)評価額について

被相続人又は贈与者が課税時期開始前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築した一定の賃貸用不動産については、通常の取引価額に相当する金額(時価)によって評価します。

※課税上の弊害がない限り、以下の計算式で求めた金額を「通常の取引価額」とすることができます。

  評価額 = 取得価額(地価変動等を考慮) × 80%  

(2)適用開始日

令和9(2027)年1月1日以後の相続等により取得する財産から適用されます 。

(3)除外規定(経過措置)

以下の要件をすべて満たす場合は適用されず、従来通りの評価となります。

・被相続人等が、通達に定める日より5年前から所有している土地の上に新築した家屋であること。

・その家屋が通達に定める日までに新築(建築中を含む)されたものであること。

※「通達に定める日」については、具体的な日付は今後の通達公表等を待つことになりますが、改正の適用が令和9年1月1日からであり、その数ヶ月前に詳細な計算ルール(通達)が公表されるのが通例です。

(4)改正内容から考えられる疑問点等

①税制改正大綱に記載された「一定の貸付用不動産」の範囲については、現時点では明らかではありませんが、一棟所有の賃貸マンションはもちろん、マンション通達の対象となっている分譲マンション等の区分所有不動産についても、貸付用であれば評価見直しの対象になると考えられます。

なお、貸付用不動産であることの判定をどのように行うかについては明らかになっておらず、今後確認が必要です。

②取得価額を基に評価額を算定する場合、建物については減価償却(定額法)による減価を反映するものと考えられますが、土地について地価変動の影響等をどのように加味するのかは明らかではありません。なお、最後に100分の80を乗じるのは、財産評価に採用される路線価と同様に、評価の安全性を考慮したものです。

③財産評価基本通達では、賃貸マンションの敷地は貸家建付地として、家屋は貸家として評価しますが、評価見直しの対象となる貸付用不動産について、借家権等を考慮した貸家建付地や貸家の評価となるかは明らかではありません。

3.不動産小口化商品

(1)評価額について

不動産特定共同事業契約や信託受益権などのうち一定のもの(いわゆる不動産小口化商品など)に基づき権利の目的となっている貸付用不動産については、取得時期にかかわらず課税時期における通常の取引価額に相当する金額(時価)で評価します 。

※課税上の弊害がない限り、以下の金額を参酌し「通常の取引価額」とすることができます。

・出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等

・事業者等が把握している適正な売買実例価額

・定期報告書等に記載された不動産の価格

ただし、これらに該当するものがない場合は、上記2に準じて(取得時期や評価の安全性を考慮して)評価を行うこととされています 。

(2)適用開始日

令和9(2027)年1月1日以後の相続等により取得する財産から適用されます 。

(文責:税理士法人FP総合研究所)