【No1045】米国の遺族年金の相続税の取扱い及び評価方法について

被相続人が米国で勤務していた等の理由で米国で年金を支払っていた場合、その遺族に米国の遺族年金が支払われるケースがあります。その際の相続税の取扱い及び評価方法について解説します。  

(1)遺族年金の相続税の取扱い

日本の遺族年金は、国民年金法や厚生年金保険法により「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。」と明記されていることから相続税の課税の対象とはなりません。

しかし、米国の遺族年金については上記のように個別に非課税とする規定がありません。したがって、被相続人の死亡に基因して受給権が発生するものとして、契約に基づかない定期金に関する権利(みなし相続財産)に該当し課税の対象となります。

(2)裁決例

2026年2月25日の東京地裁における、米国の公的年金に加入していた夫を亡くした妻が受け取る遺族年金が相続税の課税対象となるか否かを巡る事件で、原告は日本の公的遺族年金が各個別法(国民年金法等)により非課税とされている一方で、実態がほぼ同じ海外の年金だけに課税するのは不当であるという訴えを主張しました。

東京地裁は、「日本の遺族年金が非課税とされるのは、その年金受給権が死亡に基因して受給権が発生するものとしてみなし財産に該当するものの、各個別法により非課税規定が設けられているので相続税は課税されないこととされているからであって、その性質上当然に相続税の課税対象外となっているからではない。そして、米国の遺族年金については、その年金受給権はみなし相続財産に該当し、法令上米国の公的年金に係る非課税規定は設けられていないから相続税は課税されることとなる。」との判決を下しました。

本件は米国の遺族年金が日本の相続税の課税対象になるとした、初めての判決とみられます。

(3)評価方法

米国の遺族年金の相続税評価は、定期金に関する権利の規定を準用して終身定期金の評価方法にしたがって行います。具体的な計算方法は以下の通りです。

次の①~③のいずれか多い金額

①解約返戻金の金額

②一時金の給付を受けることができる場合の一時金の金額

③年間平均受給額×受給者の平均余命に応じた予定利率による複利年金現価率

なお、米国遺族年金の場合、通常解約返戻金や一時金の給付はないため、③の金額が採用されます。

▼具体例(月の受給額1,500ドル、相続発生日のTTB150円/ドル、遺族年金受給者60歳(女性)の場合)

〇年金平均受給額:1,500ドル×12ヶ月×150円/ドル=2,700,000円

〇60歳女性の平均余命:29年(厚生労働省が公表している完全生命表にて確認します。)

〇予定利率:2.6%(米国遺族年金の場合、公表されている社会保障年金信託基金の実効金利(※)を用います。)

※米国年金HP(https://www.ssa.gov/oact/progdata/effectiveRates.html)のEffective率

〇年利2.6%の複利年金現価率:20.191(国税庁HP「定期金に関する権利の自動計算

(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/nofu-shomei/teikikin/teikikin_menu.html)」ツールにて計算)

2,700,000円×20.191=54,515,700円

したがって、この場合の評価額は54,515,700円となります。

(4)さいごに

日本の遺族年金が相続税の非課税対象であることで米国の遺族年金も同様に非課税だと思い込んでしまうことにより、申告漏れを指摘されるケースも少なくありません。また、米国の遺族年金の評価は将来もらう予定の総額を現在価値に直すといくらかという視点で評価をするため、評価額が想像以上に高額になる傾向がありますが、正しく申告すれば配偶者の税額軽減等により納税が出ない可能性もあります。課税の対象であることを知らずに後から指摘され後悔することがないよう、注意が必要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)