【No515】退職所得の源泉徴収票等の提出範囲拡大
令和7年度税制改正により、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票(以下「退職所得の源泉徴収票等」といいます。)」の提出範囲が拡大された件についてご紹介します。
現行では、退職手当等の支払者である会社が「退職所得の源泉徴収票等」を税務署長と市区町村長に提出する必要があるのは、受給者(居住者)が役員の場合のみとなっていますが、令和8年1月1日以後に支払う退職手当等については、全ての居住者に拡大し、受給者が従業員の場合にも提出することが必要となりました。
〇改正後は全受給者(居住者)について、受給者交付用、税務署提出用、市区町村提出用の計3通を作成し交付・提出
現行においては、退職手当等の受給者が法人の役員の場合「退職所得の源泉徴収票等」を、
「ア」受給者交付用 「イ」税務署提出用 「ウ」市町村提出用の計3通を作成し、それぞれに交付・提出する必要があります。
一方、受給者が法人の役員以外(従業員)の場合は、「イ」の税務署提出用「ウ」の市町村提出は不要とされているため、「ア」受給者交付用のみ作成・交付すればよいとなっています(旧所規94②、旧地規2の5の3ただし書)。
改正後は、受給者が役員か従業員かによる違いは生じないため、「居住者」に該当する場合は、「ア」「イ」「ウ」すべての交付・提出が必要(所規94①、地規2の5の3①)となります。
〇退職金の支払日で判断
上記の提出範囲の見直しは「令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等」に適用されます。
退職日ではなく、支払日で判断されますのでご注意下さい。
例えば、令和7年12月末に会社を退職した従業員に、退職手当等を令和8年1月中に支払った場合は、当該受給者に係る「退職所得の源泉徴収票等」を税務署長と市区町村長に提出することになります。
なお、提出期限については見直しが行われておりませんので、現行と同様、原則として退職後1か月以内に、「ア」受給者交付用を本人に、「イ」税務署提出用を所轄税務署長に、「ウ」市町村提出用を受給者の住所地(支払年の1月1日現在)の市区町村長にそれぞれ交付・提出します。
(文責:税理士法人FP総合研究所)