【No516】電子帳簿等保存制度の見直し・スキャナ保存制度の要件緩和について
令和7年度税制改正において、請求書等のデジタルデータ(電子取引データ)を自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が、電子帳簿保存法に新設されました。e-Taxスキャナ読取り等の要件にも見直しがありましたので、お知らせします。
1.令和7年度税制改正の概要
請求書等のデジタルデータ(電子取引データ)を自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度において、それらの電子取引データを一定の要件を満たして送受信・保存を行う場合、その電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税の10%加重の適用対象(※1)から除外するとともに、青色申告特別控除65万円を適用することができるようになりました。
(1)電子帳簿等保存制度の見直し
電子データの隠蔽又は仮装には電子データを直接改ざんするほか、紙段階で不正のあった請求書や相手と通謀して受領した架空請求書などをスキャナ保存する場合なども含まれます。
令和7年度税制改正では電子データの訂正、削除の事実、内容が確認できる(あるいは訂正、削除できない)など一定の機能を持ち、国税庁長官が定める基準に適合したシステム(特定電子計算機処理システム)を使用して授受・保存した電子データ(特定電磁的記録。災害などの事情で保存できない場合を含む)は10%加重の対象から除外されます。
この改正は、令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税に適用されます。
※1所得税、法人税及び消費税の電子取引において、電子データが隠蔽又は仮装された事実に基づき期限後申告等があった場合、申告漏れ等に加算される重加算税は、国税通則法68条4項に規定される割合に加え、さらに10%が加重されます。
(2)青色申告特別控除65万円の適用要件追加
これまで青色申告で65万円の特別控除を受ける要件は、優良な電子帳簿を備え、保存することまたはe-Taxを利用して申告書などを提出することでした。
令和7年度税制改正により、上記(1)の特定電子計算機処理システムを使用して電子データの授受・保存を行う場合にも65万円の青色申告特別控除を受けられるようになります。
上記の税制上の措置を受けるためには、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、電子取引データを新設された一定の要件を満たして送受信・保存を行い、確認できるようにしておく必要があります。また、あらかじめ届出書の提出も必要です。
2.納税通知書等に係るeLTAX経由での送付
固定資産税、都市計画税、自動車税種別割及び軽自動車税種別割の納税通知書(課税明細書、更正決定通知書、税額変更通知書を含む)等について、納税者からの申出により、eLTAX を通じて副本を送付できるようになります。
この改正は、法人に対して送達する納税通知書等については令和9年4月1日以後に送達するものから、個人に対して送達する納税通知書等については令和10年4月1日以後に送達するものから適用されます。
3.スキャナ読取り要件の緩和によるe-Taxの利便性向上
電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請書面等に記載すべき事項及び添付書面等に記載されている事項又は記載すべき事項をスキャナで読取り、イメージデータで送信する場合、現行の「赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上であること」から「白色から黒色までの階調が256階調以上であること」となり、データ容量が大幅に削減されます。
また、これまでのファイル形式であるPDF形式等に加えJPEG(JPG)形式が利用できるようになり、送信可能データ容量も拡大されます。
この改正は、令和10年1月1日から適用されます。
出典:国税庁「請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されました~令和7年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~(令和7年4月)」
引用:財務省「令和7年度税制改正の大綱(7/9)」
(文責:税理士法人FP総合研究所)