【No543】2026年施行「改正下請法」
令和8年(2026年)1月1日から、「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称:取適法 とりてきほう )」として新たに施行されます。これにより、適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大されます。
1.名称変更
「下請」という言葉には、委託側と受託側の上下関係を連想させる側面がありました。そのため、法律の名称以外にも、従来の「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に変更されます。そのほかにも、「下請代金」は「製造委託等代金」に変更されます。

2.適用範囲の拡大
適用対象となる事業者と適用対象となる取引の範囲が拡大されます。
① 事業者の基準の見直し
これまでの資本金基準に加え、従業員数による基準(常時使用する従業員数300人(製造委託等の場合)又は100人(役務提供委託等の場合))が新たに追加されます。委託事業者・中小受託事業者が資本金基準又は従業員基準のいずれかの基準を満たす場合、取適法の適用対象となります。
② 対象取引の追加
従来の製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、新たに「特定運送委託」が追加されました。特定運送委託は、事業者が販売する物品や、製造や修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引です。改正前の下請法では、製造業者や小売業者が自社商品を顧客へ届けるために運送会社へ配送を依頼する場合、それは自社の販売業務の遂行と見なされ、下請法の役務提供委託の範囲には含まれていませんでした。

3.義務・禁止事項
取適法では、委託事業者に対して、中小受託事業者との取引における適正な対応を求めるため、下図の4つの義務と11の遵守事項が課されています。違反した場合には、勧告、指導のほか、50万円以下の罰金が科されることがあります。
その中でも長年の商慣行として当たり前に行われてきた支払い方法にも変更があり、特に重要な変更は以下の2点です。
(1) 約束手形(手形)による支払いが全面的に禁止されます。一括ファクタリングや電子記録債権を使用する場合には、支払期日(物品等を受領した日から起算して60日以内)までに、下請事業者が代金満額相当の現金を確実に受け取れるようにする必要があります。
(2) 銀行の振込手数料を受注者(中小受託事業者)に負担させる行為が、事前の合意の有無にかかわらず、違法な「代金の減額」とみなされるようになります。

4.事業者の主な対応
●発注者側
資本金が小さくても、従業員数が300人(役務提供等は100人)を超えていれば「委託事業者」として規制を受けます。規制対象となりうる取引先へ照会を行い、従業員数が300人(または100人)以下の事業者がいないかを確認する必要があります。
長期の手形による支払いは禁止となり、支払期日(最長60日)までに受注者が代金相当の現金を得ることが困難となる場合にも違反となります。長年の商習慣の変化は発注者側の資金繰りにも影響を与えます。
●受注者側
自社の従業員数が300人(または100人)以下であれば、新たに法の保護対象となる可能性があります。発注者が基準(従業員数300人超等)を満たす場合、取引条件の適正化を求めることができる可能性があります。
●物流業務の点検
荷主が顧客への商品配送などを運送業者に委託する行為(特定運送委託)が新たに規制対象となります。
荷主企業は、自社が資本金や従業員数の基準を満たす場合、委託先の運送業者が中小受託事業者に該当しないかを確認し、該当する場合は契約条件を法に準拠させる必要があります。
【図表 出典:公正取引委員会・中小企業庁】
(https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf)
【出典:政府広報オンライン より一部引用】
(https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9983.html)
(文責:税理士法人FP総合研究所)