【No281】「医療DXの推進に関する工程表の公表」について

 医療DXの推進に関する工程表の骨子案について医療経営FPNewsNo.273で基本的な考え方等をご案内しましたが、今回は、政府が令和5年6月2日に第2回医療DX推進本部を開催し、医療DXの推進に関する工程表が取りまとめられましたのでその続報としてお知らせします。

 1.医療DXの推進に関する工程表(案)の概要

 今回、最終的に取りまとめられた具体的な施策の概要は以下の通りです。

(1)マイナンバーカードの健康保険証の一体化の加速等

 ○ 2024年秋に健康保険証を廃止する。

 ○ 2023年度中に生活保護(医療扶助)でのオンライン資格確認の導入。

(2)全国医療情報プラットフォームの構築

 ○ オンライン資格確認等システムを拡充し、全国医療情報プラットフォームを構築。

 ○ 2024年度中の電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報共有サービス(仮称)を構築し、共有する情報を拡大。

 ○ 併せて、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係るマイナンバーカードを利用した情報連携を実現するとともに、次の感染症危機にも対応。

 ○ 2024年度中に、自治体の実施事業に係る手続きの際に必要な診断書等について、電子による提出を実現。

 ○ 民間PHR事業者団体やアカデミアと連携したライフログデータの標準化や流通基盤の構築等を通じ、ユースケースの創出支援。

 ○ 全国医療情報プラットフォームにおいて共有される医療情報の二次利用について、そのデータ提供の方針、信頼性確保のあり方、連結の方法、審査の体制、法制上あり得る課題等の論点について整理し検討するため、2023年度中に検討体制を構築。

(3)電子カルテ情報の標準化等

 ○ 2023年度に透析情報及びアレルギーの原因となる物質のコード情報について、2024年度に蘇生処置等の関連情報や歯科・看護等の領域における関連情報について、共有を目指し標準規格化。2024年度中に、特に救急時に有用な情報等の拡充を進めるとともに、救急時に医療機関において患者の必要な医療情報が速やかに閲覧できる仕組みを整備。薬局との情報共有のため、必要な標準規格への対応等を検討。

 ○ 標準型電子カルテについて、2023年度に必要な要件定義等に関する調査研究を行い、2024年度中に開発に着手。電子カルテ未導入の医療機関を含め、電子カルテ情報の共有のために必要な支援策の検討。

 ○ 遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す。

(4)診療報酬改定DX

 ○ 2024年度に医療機関等の各システム間の共通言語となるマスタ及びそれを活用した電子点数表を改善・提供して共通コストを削減。2026年度に共通算定モジュールを本格的に提供。共通算定モジュール等を実装した標準型レセコンや標準型電子カルテの提供により、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、医療機関等の間接コストを極小化。

 ○ 診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しに関して、実施年度及び施行時期について、中央社会保険医療協議会の議論を踏まえて検討。

(5)医療DXの実施主体

 ○ 社会保険診療報酬支払基金を、審査支払機能に加え、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体とし、抜本的に改組。

 ○ 具体的な組織のあり方、人員体制、受益者負担の観点を踏まえた公的支援を含む運用資金のあり方等について速やかに検討し、必要な措置を講ずる。

内閣官房 『第2回医療推進本部 資料2医療DXの推進に関する工程表(案)概要)』より引用

内閣官房 『第2回医療推進本部 資料3医療DXの推進に関する工程表(案)(全体像)』より引用

2.医療DXのメリット

 医療DXを進めていく上で「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」が重点施策に掲げられています。

 その上で、ライフステージ別(乳幼児期・学童・思春期~青年期、成人期~高齢期)また医療・介護従事者、保険者・ベンダー等関係者向けの医療DXのメリット(イメージ)が、2030年まで見据えて時系列に整理されました。

内閣官房 『第2回医療推進本部 資料4医療DXのメリット』より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)