【No367】医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について

令和7年4月3日の第193回社会保障審議会医療保険部会において、医療法の一部を改正する法律案についての議論が行われました。今回の医業経営FPNewsではこの内容についてご案内します。

1.医療法とは

医療法は、1948年(昭和23年)に交付され、第一条において、「医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする」とされており、医療提供施設(病院・診療所など)の開設、管理に関する規制等を設けています。

医師法は数年に一度改正が行われており、今回の改正は高齢者の増加を前に、総合的な改革によってより質の高い医療やケアを効率的に提供する体制を構築することを目的としています。

 e-Gov法令検索「医療法」より引用   

2.改正の趣旨

高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、地域医療構想の見直し等、医師偏在是正に向けた総合的な対策の実施、これらの基盤となる医療DXの推進のために必要な措置を講ずる。

厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」P.1より引用

3.改正の概要

(1).地域医療構想の見直し等【医療法、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律等】

①地域医療構想について、2040年頃を見据えた医療提供体制を確保するため、以下の見直しを行う。  

・病床のみならず、入院・外来・在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とする。

・地域医療構想調整会議の構成員として市町村を明確化し、在宅医療や介護との連携等を議論とする場合の参画を求める。

・医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能等)報告制度を設ける。

②「オンライン診療」を医療法に定義し、手続規定やオンライン診療を受ける場所を提供する施設に係る規定を整備する。

③美容医療を行う医療機関における定期報告義務等を設ける。

(2)医師偏在是正に向けた総合的な対策【医療法、健康保険法、総確法等】

①都道府県知事が、医療計画において「重点的に医師を確保すべき区域」を定めることができることとする。

保険者からの拠出による当該区域の医師の手当の支給に関する事業を設ける。

②外来医師過多区域の無床診療所への対応を強化(新規開設の事前届出制、要請勧告公表、保険医療機関の指定期間の短縮等)する。

③保険医療機関の管理者について、保険医として一定年数の従事経験を持つものであること等を要件とし、責務を課すこととする。

(3)医療DXの推進【総確法、社会保険診療報酬支払基金法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等】

①必要な電子カルテ情報の医療機関での共有等や、感染症発生届の電子カルテ情報共有サービス経由の提出を可能とする。

②医療情報の二次利用の推進のため、厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベースの仮名化情報の利用・提供を可能とする。

③社会保険診療報酬支払基金を医療DXの運営に係る母体として、名称、法人の目的、組織体制等の見直しを行う。

また、厚生労働大臣は、医療DXを推進するための「医療情報化推進方針」を策定する。その他公費負担医療等に係る規定を整備する。

厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」P.1より引用

4.社会保険診療報酬支払基金の組織体制の見直し等について

①法人名称の見直し

診療報酬の審査支払業務と医療DX業務の両方を担う法人の名称とするため、「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」とする。

②医療DX業務への国のガバナンス発揮

厚生労働大臣が、医療DXの総合的な方針(「医療情報化推進方針」)を定め、支払基金は、医療DXの中期的な計画(「中期計画」)を定めることとする。

③柔軟かつ一元的な意思決定体制

・現行の理事会(4者構成16人)に代えて、「運営会議」を設置。法人の意思決定を行い、業務の執行を監督する。

・審査支払に関する予算・決算や事業計画等は、新たに設ける「審査支払運営委員会」において決定する。

・医療DX業務を担当する常勤理事(CIO)を新たに設ける。

・医療DX業務は、運営会議における方針決定を受けて、理事長・CIO等が中心となって柔軟かつ迅速に執行していく体制とする。 

④セキュリティ対策の強化

・医療情報の安全管理のための必要な措置を講じる義務を設ける。

・重大なサイバーセキュリティインシデントや情報漏洩等が発生した場合に、厚生労働大臣への報告義務を設ける。

厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」P.14より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)