【No369】令和8年度診療報酬改定の予定について
今回の医業経営FPNewsでは次回の診療報酬改定に向けたスケジュールの確認と重要なトピックをご紹介いたします。
1.令和8年度診療報酬改定に向けた主な検討スケジュール
令和8年度の診療報酬改定に向けた主な検討スケジュールは次のようになっています。
中央社会保険医療協議会 総会(第606回)「資料 総-7」より引用
令和7年4月より診療報酬改定に向けた検討が開始されています。令和6年の診療報酬改定より、電子カルテベンダー等への影響を考慮し、施行日が従来の4月1日から6月1日に変更となったため、令和8年度の診療報酬改定は令和8年6月1日に実施されることが予定されています。
なお、中央社会保険医療協議会は、日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働大臣の諮問機関であり、専門部会や小委員会でまとめられた報告に基づき、総会において審議、答申をおこなう組織となります。
2.財政制度等審議会における議論について
令和7年4月23日に財務省の財政制度等審議会において持続可能な社会保障制度の構築をテーマとして、医療・介護分野を含む議論が実施されました。
医療費を含む社会保障関係費の増大は、国家予算においても大きな問題であるため、社会保障制度を維持するための提案が審議会より発表されています。
その中で診療報酬改定についても言及されており、今後の主な改革の方向性が次のように示されています。
財務省 財政制度分科会(令和7年4月23日開催)資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)34ページ」より引用
さらに審議会の内容を読み進めていくと次のような具体案が改定の方向性として提示されています。
①生活習慣病患者の疾病管理について、病状が安定してきた患者に対するフォローアップは、一般的な診療ガイドラインに沿う形で報酬の算定要件を厳格化すべき。
財務省 財政制度分科会(令和7年4月23日開催)資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)39ページより引用
②医師偏在対策として、地域別診療報酬の仕組みを活用し、報酬面からも診療所過剰地域から診療所不足地域への医療資源のシフトを促していくべき。なお、当面の措置として、診療所過剰地域における1点当たりの単価(10円)の引下げを先行させ、それによる公費の節減効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化することも考えられる。
財務省 財政制度分科会(令和7年4月23日開催)資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)42ページより引用
③リフィル処方を短期的に強力に推進していく観点から、早期に的確なKPIを設定するとともに、リフィル処方の実績がリアルタイムで確認できるような仕組みを設けるべき。また、特定の慢性疾患などにおいて、継続的な状況確認が必要な場合でも、薬剤師との連携によりリフィル処方が活用されるよう、診療報酬上の加減算も含めた措置を検討すべき。
財務省 財政制度分科会(令和7年4月23日開催)資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)45ページより引用
3.さいごに
ご紹介した令和7年4月23日開催の財政制度等審議会においては、1点当たりの単価の見直し等大胆な議論もおこなわれています。
もちろん、当該審議会での提案内容のすべてが直接的に令和8年度の診療報酬改定において実施されるわけではありませんが、単価の見直し案の発端となった医師及び診療所の地域偏在問題は、近年厚生労働省をはじめとして様々な機関において問題視されている重要課題の一つであることは間違いありません。
診療所過剰地域又は診療所不足地域で開設されている診療所においては、地域偏在問題の対策として、その運営に対して大きな影響を受ける診療報酬改定が実施される可能性も含めて、各関連機関の今後の動向を注視する必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)