【No371】経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2025の原案について

政府は令和7年6月6日に第7回経済財政諮問会議を開催し、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2025の原案」が示されました。今回の医業経営FPNewsでは医療・介護分野に関連がある主な項 目について一部抜粋してご案内します。

1.医療・介護・こどもDX

第2章『賃上げを起点とした成長型経済の実現』の「3.「投資立国」及び「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加」にある、(2)「DXの推進」では、医療・介護・こどもDXの推進、標準型電子カルテの本格運用の具体的内容を2025年度中に示すことが明記されています。

医療DX工程表に基づき、医療・介護DXの技術革新の迅速な実装により、全国で質の高い効率的な医療・介護サービスが提供される体制を構築する。このため、医療DXの基盤であるマイナ保険証の利用を促進しつつ、2025年12月の経過措置期間後はマイナ保険証を基本とする仕組みに円滑に移行する。全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービスの普及や電子処方箋の利用拡大、PHR情報の利活用を進めるほか、標準型電子カルテの本格運用の具体的内容を2025年度中に示すことも含め必要な支援策の具体化を検討し、その普及を促進するとともに、介護情報基盤の整備、診療報酬改定DX、薬局が有する情報の標準化とデジタル化を進める。AI創薬、AIホスピタルの実用化を支援する。標準仕様を策定し、クラウド技術を活用した病院の情報システムの開発・導入に向け、規制的手法や財政的手法など必要なインセンティブ措置の在り方を含め、検討を進める。医薬品や検査の標準コードの在り方の検討を踏まえたマスタの一元管理、予防接種事務のデジタル化、ワクチン副反応疑いの電子報告、予防接種データベースの整備を進める。医療・介護データを最大限有効活用し、イノベーションを進めるため、医療・介護の公的データベースの仮名化情報等の利活用を可能とするためのシステム整備を進めるとともに、社会保険診療報酬支払基金の改組や公費負担医療制度等のオンライン資格確認を円滑に実施する。医療安全の向上に向け、医療機関のサイバーセキュリティ対策、医薬品・医療機器等の物流DXの推進に資する製品データベース構築を進める。これらの取組に加えて、必要に応じて医療DX工程表の見直しを検討する。
子育て世代の使いやすさに配慮し、保育や母子保健等のこども政策のDXを推進する。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)P20」より引用

2.公定価格改定による処遇改善

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「2.主要分野ごとの重要課題と取組方針」にある、(1)「全世代型社会保障の構築」では、公定価格改定による処遇改善を進めることが明記されています。

本格的な少子高齢化・人口減少が進む中、技術革新を促進し、中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靱で持続可能な社会保障制度を確立する。このため、「経済・財政新生計画」に基づき、持続可能な社会保障制度を構築するための改革を継続し、国民皆保険・皆年金を将来にわたって維持し、次世代に継承することが必要である。
医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。このため、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、次期報酬改定を始めとした必要な対応策について、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。
このため、2024年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。また、介護・障害福祉分野の職員の処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組むとともに、これまでの処遇改善等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。また、事業者の経営形態やサービス内容に応じた効果的な対応を検討する。

 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)P37」より引用

3.中長期的な医療提供体制の確保等

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「2.主要分野ごとの重要課題と取組方針」にある、(1)「全世代型社会保障の構築」の「中長期的な医療提供体制の確保等」では、医師の地域間・診療科間の偏在への対応やリフィル処方等に関することが明記されています。

2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、コロナ後の受診行動の変化も踏まえ、質が高く効率的な医療提供体制を全国で確保する。このため、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進めつつ、かかりつけ医機能の発揮される制度整備、医療の機能分化・連携や医療・介護連携、救急医療体制の確保、ドクターヘリの安全かつ持続可能な運航、大学病院・中核病院からの医師派遣の充実、適切なオンライン診療の推進、減少傾向にある外科医師の支援、都道府県のガバナンス強化等を進める。
地域医療構想については、地域での協議を円滑に進めるため、医療機関機能・病床機能の明確化、国・都道府県・市町村の役割分担など、2025年度中に国がガイドラインを策定し、各都道府県での2026年度以降の新たな地域医療構想の策定を支援する。
医師の地域間・診療科間の偏在への対応については、経済的インセンティブや規制的な手法といった地域の医療機関の支え合いの仕組みを含めた総合的な対策のパッケージを順次実施し、その効果を検証する。  
こうした医師の適正配置のための支援の在り方について、全国的なマッチング機能やリカレント教育、医学教育を含めた総合的な診療能力を有する医師の育成、医師養成過程の取組と併せて、2025年末までに検討を行う。地域の医師確保への影響にも配慮し、医師偏在是正の取組を進め、医師需給や人口減少等の中長期的な視点に立ち、2027年度以降の医学部定員の適正化を進める。また、偏在対策を含む看護職員の確保・養成や訪問看護におけるICT活用を含む看護現場におけるDXの推進、在宅サービスの多機能化といった在宅医療介護の推進に取り組む。  
医療保険制度について、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、給付と負担の見直し等の総合的な検討を進める。高額療養費制度について、長期療養患者等の関係者の意見を丁寧に聴いた上で、2025年秋までに方針を検討し、決定する。  
妊娠・出産・産後の経済的負担の軽減のため、2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進める。「出産なび」の機能を拡充するほか、小児周産期医療について、地域でこどもを安心して生み育てることのできる体制確保に向け、産科・小児科医療機関を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、医療機関の連携・集約化・重点化を含めた必要な支援を行う。
リフィル処方箋の普及・定着や多剤重複投薬や重複検査の適正化を進めるとともに、保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大や保険外診療部分を広くカバーし、公的保険を補完する民間保険の開発を促す。国民健康保険の都道府県保険料水準の統一に加え、保険者機能や都道府県のガバナンスの強化を進めるための財政支援の在り方について検討を行う。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)P38」より引用

4. 働き方に中立的な年金制度の構築等

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「2.主要分野ごとの重要課題と取組方針」にある、(1)「全世代型社会保障の構築」の「働き方に中立的な年金制度の構築」は、経済財政運営と改革の基本方針2024に引き続き、いわゆる年金の壁への対応が明記されています。

公的年金については、働き方に中立的な制度を構築する観点から、改正年金法を踏まえ、更なる被用者保険の適用拡大を進めるとともに、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進する。 

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)P39」より引用 

5.今後のスケジュール

「経済財政運営と改革の基本方針」は、政府の経済財政政策に関する基本的な方針を示すとともに、 経済、財政、行政、社会などの分野における改革の重要性とその方向性を示すものです。今後、当該原 案を基に与党内の議論を経て令和7年6月中に閣議決定する見通しです。

(文責:税理士法人FP総合研究所)