【No388】病理連携診断の仕組みにより受領する診療報酬に係る税務上の取扱いについて
令和7年3月11日に「連携病理診断の仕組みにより病理診断医が受領する診療報酬に係る税務上の取扱いについて」という文書回答事例が国税庁のサイトで公表されました。
本回答事例は、連携病理診断の仕組みにより病理診断医が診療報酬を受領する場合の消費税の取扱いと措置法26条の適用について文書回答手続を利用した照会がされていたものに対する回答となります。
今回の医業経営FPNewsでは、病理診断医が連携病理診断の仕組みにより診療報酬を受領する場合と保険医療機関が病理診断医に対して連携病理診断を依頼する場合の双方について税務上の取扱いを解説いたします。
1.連携病理診断の概要
平成20年の医療法施行令改正の際に「病理診断科」が標榜診療科として認められました。
また、平成24年度診療報酬改定において、病理診断管理加算が診療報酬として認められるとともに、患者が受診した保険医療機関において、患者から採取した検体又は検体から作製した標本(以下、「検体等」といいます)を所定の施設基準等を満たす保険医療機関に送付し、当該保険医療機関が病理診断を行ってその結果を報告するという「保険医療機関間の連携による病理診断」の仕組みが創設されました。
さらに、平成28年度診療報酬改定によって、検体等の受取側の要件が緩和されたことにより、病理診断科を標榜する診療所が、外部の医療機関から検体を受け入れて病理診断を行うことが可能になりました。
厚生労働省が公表している「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると令和5年10月1日現在、「病理診断科」を標榜している一般診療所の施設数は82施設となります。
厚生労働省「広告可能な診療科名の改正について」参照
厚生労働省「平成24年度診療報酬改定の概要」参照
厚生労働省「平成28年度診療報酬改定の概要」参照
2.検体等を受け取って病理診断をおこなう保険医療機関における税務上の取扱い
連携病理診断の仕組みに基づいて行う病理診断は、連携先医療機関が行う医療サービスとは別個の独立した療養の給付であり、また、連携先医療機関から検体等を受け取って病理診断を行う保険医療機関に支払われる金銭は、審査・支払機関等から支払われる療養の給付に対する診療報酬の一部を分配したものであると考えられます。
そうすると、検体等を受け取って病理診断を行う保険医療機関は自ら被保険者(患者)に対して療養の給付を行い、当該療養の給付に対して支払を受けるべき診療報酬について、連携先医療機関を通じて受け取るものと考えられます。
したがって、当該病理診断の対価として受け取る金銭については、それぞれ以下のような取扱いとなります。
国税庁 東京国税局 文書回答事例 一部引用
(1)消費税法上の取扱い
健康保険法の規定に基づく「療養の給付」の対価に該当するため、消費税法第6条及び別表第二第6号イにより消費税が非課税となります。
国税庁 法令解釈通達 「第6節 医療の給付等関係」参照
(2)租税特別措置法第26条第1項の取扱い
事業所得の金額の計算上、その他の要件を満たす限り、租税特別措置法第26条第1項を適用することができます。
租税特別措置法第26条の詳細については、過去の医業経営FPNewsNo217において解説しています。
3.検体等を送付して病理診断を依頼する保険医療機関における税務上の取扱い
通常、医療機関において血液検査などを検査会社に外注することは多く見られます。このような場合、当該検査会社に支払った金銭は外注費として、消費税を課税処理しますが、病理診断を依頼する保険医療機関が連携先医療機関に対して支払う金銭は、審査・支払機関等から支払われる療養の給付に対する診療報酬の一部を分配したものであると考えられるため、消費税法上の課税取引には該当しません。
(文責:税理士法人FP総合研究所)