【No389】労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の 被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて
医業経営FPNews No.344でご案内しました、社会保険に関係する「年収の壁」の一つに、「130万円の壁」があります。医療機関で働くパートタイム労働者の方々が最も意識する収入基準であるこの「130万円の壁」ですが、判定の対象となる年間収入の取扱いについて、令和7年10月1日付で厚生労働省より通知がございましたので、その内容をご案内します。
1.130万円の壁とは
健康保険及び厚生年金保険において、会社員の配偶者等で収入が一定以下の方は、被扶養者(第3号被保険者)となり、社会保険料の負担が発生しないこととなります。一方で、会社員の配偶者等であっても、一定の収入を超えると社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少することとなります。この一定の収入基準の一つが「130万円の壁」と呼ばれており、社会保険料の負担が発生することで手取り収入が減少することを回避するために働き控えをされるケースが存在しています。
2.年間収入の取り扱いについて
【現状】
被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定している。
【令和8年4月1日以降】
労働契約で定められた賃金(注1)から見込まれる年間収入が130万円未満(注2)であり、かつ、他の収入が見込まれず、
(1)認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合(注3)
(2)認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合
には、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱うこと。
(注1)労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当及び賞与も含まれる。
(注2)認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては、180万円。認定対象者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合にあっては150万円。
(注3)当該要件を満たさない場合であっても、当該認定対象者の収入が被保険者の年間収入を上回らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当するものとして差し支えないこと。
厚生労働省 「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」 引用
上記のことから、現状では労働契約によらず、予め金額を見込み難い時間外労働に対する賃金等の臨時収入を含めた実績をベースに判定が行われていましたが、令和8年4月1日以降は、臨時収入を含まない労働契約の内容をベースに判定が行われることとなるため、実質的に年間収入の判定が緩和されることとなります。
なお、保険者が労働契約の内容を確認する際には、労働基準法第15条の規定に基づき交付される「労働条件通知書」等の提出を求めることとし、併せて、当該認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを行わせることとなります。
厚生労働省 「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」 参照
3.Q&A
上記取り扱いについて、厚生労働省からQ&Aが公開されていますので、一部を抜粋してご案内します。その他のものについては下記のリンクよりご確認ください。
Q1 労働契約内容によって年間収入を判定することにした趣旨如何。
A 認定対象者の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、所定外賃金の見込みを含めた今後1年間の収入見込みにより判定をしているところですが、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととしたものです。そのため、労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の認定における年間収入には含まないこととなります。
Q2 労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であるとは、具体的にどのような場合か。
A 労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類において規定される時給・労働時間・日数等を用いて算出した年間収入の見込額が130万円未満である場合を想定しています。そのため、当該書類上に明確な規定がなく予め金額を見込み難い時間外労働に対する賃金等は年間収入の見込額には含まないこととなります。
Q4 労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったが、扶養認定時点では経常的に時間外労働が発生している場合は、どのように年間収入を判定するのか。
A 労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったのであれば、扶養認定時点で時間外労働が発生していたとしても、当年度においては一時的な収入変動とみなし、今回の取扱いにより年間収入を判定することとなります。
厚生労働省 「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて」 引用
(文責:税理士法人FP総合研究所)