【No390】給与所得者で確定申告が必要な人

所得税の確定申告が必要な人は、主に所得税法第120条で定められています。ただし、所得税法第121条では、給与所得者や公的年金受給者などで一定の要件を満たす場合は、確定申告を要しないケース(確定申告不要制度)が設けられています。

そのため、医療機関の院長先生及び院長先生の配偶者並びにお勤めの従業員についても一定の要件を満たせば確定申告を要しないケースがあります。

今回の医業経営FPNewsでは、所得税の確定申告が必要な人、不要な人の境界線についてご案内します。

1.所得税の確定申告とは

所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得額を計算し、それに応じて課せられる所得税を確定させ、国に申告・納税する手続きです 。

確定申告が必要な人の基本的な基準は、所得税法第120条で定められおり、この条文はその年分の合計所得金額が各種所得控除の合計額を超える場合に、原則として確定申告をしなければならないという納税義務の基本を規定しています 。

所得税法第120条(e-Gov法令検索)

2.確定申告が不要な人(所得税法第121条)

所得税法では、すべての納税者に確定申告を義務付けていますが、特定の要件を満たす給与所得者や公的年金受給者などについては、手続きの簡素化のため、確定申告を要しないケース(確定申告不要制度)が設けられています。これは所得税法第121条に規定されています 。

確定申告が原則として不要な人の代表的なケースとしては、以下のような例が挙げられます 。

(1)会社から年末調整を受けている給与所得者(後述の「確定申告が必要なケース」に該当しない場合)

(2)公的年金の受給額が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下の人 

(3)給与所得や公的年金以外の副収入の所得合計額が20万円以下の場合

(4)上記以外で、その年分の合計所得金額が、各種所得控除の合計額以下になる人(所得控除の種類や金額によって変動します)

 所得税法第121条(e-Gov法令検索)

国税庁「確定申告が必要な方」参照

3.給与所得者でも確定申告が必要となるケース(所得税法120条)

会社員や公務員などの給与所得者は、通常、会社が行う年末調整によって納税が完結するため、確定申告が不要となることが多いです 。しかし、年末調整だけでは正確な納税額が計算できない以下のケースでは、所得税法第120条に基づき、給与所得者でも自身で確定申告を行う必要があります。

(1)複数の会社から給与を受けている人

(2)給与の年間収入金額が2,000万円を超える人

(3)給与以外の副収入(雑所得、事業所得などの各種所得)の所得合計額が20万円を超える人

(4)源泉徴収されていない外国企業から受け取った退職金がある人

国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」参照

国税庁「確定申告が必要な方」参照

4.確定申告をした方が良い人(還付申告)

以下のケースに該当する人は、確定申告が義務ではありませんが、申告を行うことで所得控除や税額控除が適用され、納めすぎた税金が戻ってくる還付申告となるため、申告を「した方が良い人」といえます 。

(1)年間の医療費の支払いが10万円または総所得金額等の5%を超える人(医療費控除の適用)

(2)住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用が初年度の人

(3)ふるさと納税をされた人(寄附金控除の適用)

 ※ただし、寄附先が5団体以内で、かつワンストップ特例申請書を提出した方は、確定申告は不要です 。

国税庁「医療費を支払ったとき」参照

国税庁「No.1213認定住宅の新築等をし令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」参照

国税庁「ふるさと納税をされた方へ」参照

5.さいごに

ご自身で所得税の確定申告が必要かどうかの判定にお悩みの場合には、国税庁のチャットボット(ふたば)を参考にするのもいいかもしれません。所得税の確定申告をすることで少しでも税金が返ってくるのであればスマートフォンとマイナンバーカードで簡単に所得税の確定申告を行うことができますので一度ご確認ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)