【No392】令和8年度診療報酬改定について

令和7年12月24日の予算大臣折衝を経て、令和8年度(2026年度)診療報酬改定の改定率及び主要方針が決定いたしました 。今回の改定は、賃金上昇や物価高騰といった経済情勢を踏まえ、令和8年度及び令和9年度の2年度平均で+3.09%という近年の改定の中でも高い水準の引き上げ幅となりました。今回の医業経営FPNewsでは、当該改定の改定率及び主要方針の概要についてご紹介いたします。

1. 改定率の全体像

診療報酬本体はプラス改定です。施行時期については「6月」である点にご留意ください。

(1)診療報酬本体

診療報酬本体の改定率および内訳は、次のとおりです。

①改定率

平均改定率

年度別改定率

+3.09%

令和8年度+2.41%

令和9年度+3.77%

②内訳

項目

改定率

※1 賃上げ分

+1.70%

※2 物価対応分

+0.76%

※3 食費・光熱水費分

+0.09%

※4 経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分

+0.44%

※5 処方・調剤や在宅医療・訪問看護、

  長期処方・リフィル処方等の対応分

▲0.15%

※6 ※1~5を除く改定分

+0.25%

③施行日

令和8年6月

(2)薬価・材料

①薬価  :▲0.86%

②材料価格:▲0.01%

※令和8年4月施行(ただし、材料価格は令和8年6月施行)

厚生労働省「診療報酬改定について」P.1~P.3参照

2. 重点項目とその配分

今回のプラス改定は、使途が明確に区分されています。特に「賃上げ対応」と「物価対応」が大きな柱です。

(1)医療従事者の賃上げ対応(+1.70%※2年平均)

医療現場の人材確保のため、以下の水準のベースアップ実現を目指す措置が講じられます。

①目標水準

看護補助者・事務職員:+5.7%分のベースアップ 

その他の医療関係職種:+3.2%分のベースアップ 

②対象の拡大

これまでベースアップ評価料の対象外だった職種(入院基本料等で措置されていた職種など)についても、今回は賃上げ対応の特例措置が含まれます。

(2)物価高騰への対応(+0.76% ※2年平均)

光熱費や資材価格の高騰に対応するため、施設類型ごとの費用関係データに基づき配分が行われます。

施設類型物価対応分(令和8年度~)

①病院   :+0.49%

②医科診療所:+0.10%

③歯科診療所:+0.02%

④薬局   :+0.01%

※別途、高度機能医療を担う病院には、特例的な上乗せ措置(+0.14%)も設けられます。

(3)入院時の食費・光熱水費の見直し

入院中の食事療養費等の基準額が引き上げられます。

①食費基準額  :1食あたり40円引き上げ

②光熱水費基準額:1日あたり60円引き上げ

※これに伴い、原則として患者負担も同額引き上げとなります。(低所得者や指定難病患者等には別途配慮措置あり)

(4)経営環境の悪化を踏まえた緊急対応(+0.44%)

令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえ、緊急的な対応として以下の配分が行われます。 

①病院   :+0.40%

②医科診療所:+0.02%

③歯科診療所:+0.01%

④薬局   :+0.01%

※病院には手厚く、診療所には厳しい配分となっています。

厚生労働省「診療報酬改定について」P.1~P.3参照

3. 今後の経営に影響する制度改革

今回の改定は、単なる点数の増減だけでなく、規制強化や経営の透明化に関する方針も示されています。

(1)医師偏在対策の強化(新規開業への規制)

改正医療法に基づき、「外来医師過多区域」において無床診療所の新規開業者が都道府県知事の要請に従わない場合、診療報酬上の減算措置が講じられます 。都市部での新規開業を検討されている場合は、エリア選定にこれまで以上の注意が必要です。

(2)経営情報の「見える化」と報告義務化

今回の改定により、医療法人の経営情報の分析がより精緻化されます。特に以下の点について、報告の義務化を含めた検討が進められます 。

①「その他の医業費用」の内訳詳細 

②職種別の給与・人数のデータ報告

※これは、診療報酬が適切に賃上げに充てられているかを検証するためでもあります 。

(3)賃上げの実効性確保

令和6年度改定ではベースアップ評価料の対象外だった「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師」や「事務職員」などについても、実際に給与(賞与含む)が引き上げられているか、実効性を確保する仕組みが構築されます 。

厚生労働省「医療法等改正を踏まえた対応について」P.6参照

厚生労働省「診療報酬改定について」P.3~P.5参照

4. さいごに

今回の改定は、施設類型によって経営への影響が大きく異なる結果となりました。特に、物価高騰と経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分の財源配分において、以下のとおり病院と診療所の差が明確になっています。

 

配分率の合計

内訳

病院

+0.89%

物価対応:+0.49%

緊急対応:+0.40%

診療所(医科)

+0.12%

物価対応:+0.10%

緊急対応:+0.02%

病院には一定の配慮がなされた一方、診療所は、薄い支援の中で経営を維持する必要があります。「収入(報酬)」の伸び悩みと「支出(人件費)」の確実な増加を見据え、特に診療所経営においては、これまで以上に厳格な収支管理が不可欠です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)