【No1002】暗号資産に関する課税関係(個人所有の場合)

暗号資産で代表的なビットコインの価格が10万ドル(約1,450万円)の大台を超え、ますます注目を集めています。また、今年に入り、金融庁が暗号資産(仮想通貨)を有価証券に並ぶ金融商品として位置付ける方向で検討に入ったとの報道も記憶に新しいかと思います。そこで、改めて暗号資産に関する個人の課税関係について説明します。

1.暗号資産(仮想通貨)取引の課税の取扱い

暗号資産は、取引のパターンが複数存在するといえます。たとえば、①暗号資産で商品等の購入をした場合、②暗号資産を売却し現金化した場合、③暗号資産を他の暗号資産と交換した場合などのパターンがあります。各取引パターンに共通する課税上の考え方としては、その時点の暗号資産の時価と取得費等の差額が所得として認識されることとなります。所有者が個人の場合、確定申告を行う際、暗号資産の取引によって生じた所得は原則として雑所得に区分されます。

※サラリーマンの方など確定申告を要しない方でも暗号資産の取引で得た年間の利益が20万円を超える場合は確定申告の必要があります(他に雑所得等がない場合)。

ただし、暗号資産の取引で得た利益が20万円未満の場合で、所得税の確定申告は不要なケースであっても、別途住民税の申告は必要となる点については注意が必要です。

【暗号資産の所得計算方法】

暗号資産利用時等の時価相当額 - 必要経費 

必要経費には、暗号資産の取得価額や購入時の手数料、売却時の手数料の他、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。

また、暗号資産の取得価額が分からない場合には、概算取得費として売却価額の5%相当額を取得費とすることが認められます。

2. 暗号資産(仮想通貨)取引の所得区分

暗号資産の取引により生じた所得は、原則として雑所得に区分されます。しかし、次のような場合には事業所得に区分されます。

(1)その暗号資産の取引自体が事業と認められる場合

※具体例:暗号資産の取引収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるケース等

(2)その暗号資産の取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合

※具体例:事業を営んでいる所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用したケース等

また、暗号資産の取引による所得は、現行法では総合課税により累進税率にて課税されます。したがって、所得額に応じて税率が異なり、最大で55%の税金(所得税、住民税)が掛かる可能性があります。

3. 暗号資産(仮想通貨)取引で損失が生じた場合の取扱い

雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(損益通算する)ことはできません。

所得税法上、他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られます。

また、損失は翌年以降に繰り越すことができません。

4. おわりに

暗号資産は、日本において「資産」として確立されているとは言えず、税制面でも「雑所得」に分類されている状況です。そんな中、風向きが変わりつつあり、暗号資産への投資が増加している背景を経て、日本においても、法整備や改革の機運が高まっています。

特に注目すべきは、上場株式や投資信託など他の金融商品と同様に、暗号資産も分離課税の対象となった場合、所得に対する税率が、現行の総合課税における最大55%から、分離課税として一定税率まで減ることになる可能性が考えられます。もし、分離課税の案が実現すれば、日本においても暗号資産へ投資する人口が増える追い風になると思われます。2025年中には更に議論が進む見通しとされていることからも今後の展望には、注視していく必要があるといえます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)