【No1012】代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算について

相続が発生した場合の遺産分割については、遺産の現物をそのままの状態で分割する現物分割、遺産を売却して売却代金を分割する換価分割、特定の相続人が遺産を相続し、他の相続人に代償金を渡す代償分割、遺産を共有の状態で相続する共有分割の4種類があります。今回はその中で代償分割の相続税の課税価格の計算についてご説明します。

(1)代償分割とは

① 概要

代償分割とは、遺産の分割に当たって、共同相続人などのうち特定の1人または数人が相続財産を現物で取得し、その

現物を取得した人が他の共同相続人などに対して金銭などを支払う方法で、現物分割が困難な場合に行われる方法です。

② 代償分割が利用される状況 

代償分割は、現物分割が困難な場合に利用されています。遺産が不動産の場合、現物分割で特定の相続人のみが不動産を取得すると、不動産を取得した相続人のみが大きな財産を相続し、相続人間で不公平な分割になってしまう場合があります。

他にも換価分割と共有分割がありますが、換価分割の場合だと、その不動産に相続人が同居していた場合に自宅を失ってしまい、事業を行っていた場合は事業を引き継ぐことができなくなってしまいます。不動産を共有分割にすると、その後の活用方法について、共有者同士でもめてしまう可能性があります。

このような場合に、不動産を取得した相続人が他の相続人に対して金銭などを支払う代償分割が行われます。

(2)代償分割の相続税の課税価格の計算方法

代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算については、下記のとおりとなります。

①代償財産を交付した人の課税価格は、相続又は遺贈により取得した現物財産の価額から、交付した代償財産の価額を控除した金額

②代償財産の交付を受けた人の課税価格は、相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた代償財産の価額の合計額

ただし、代償財産の価額について、代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、代償債務の額がその財産の代償分割の時における通常の取引価額を基として決定されている場合には、その代償債務の額に、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における相続税評価額が、代償分割の対象となった財産の代償分割の時において通常取引されると認められる価額に占める割合を掛けて求めた価額となります。

《具体例》相続人はAとBの2名とします

Aが不動産(相続税評価額8,000万円 通常の取引価額1億円)を相続により取得し、代償財産として

Bに4,000万円支払った場合

(1)相続税評価額を基に代償財産を決定した場合

 

(2)通常の取引価額を基に代償財産を決定した場合

※ 4,000万円×8,000万円÷1億円=3,200万円

(3)代償分割により交付する財産が相続人固有の不動産や有価証券の場合

代償分割により交付した財産が現預金以外の相続人固有の不動産や有価証券等の場合、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となりますので、代償財産を交付した人については、履行時の時価によりその不動産や有価証券等を譲渡したことになり、所得税が課税される場合があります。代償財産として不動産や有価証券等を取得した人については、その履行時の時価により、その不動産や有価証券等を取得したこととなります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)