【No1024】金地金等を譲渡した場合の所得税の計算方法について
近年金地金等の価格が大きく上昇しており、ここ最近で売却された場合には譲渡益が生じやすい状況となっています。そのため、今回は金地金等の現物を売却した場合の譲渡所得の計算方法についてご紹介します。
(1)譲渡所得の計算
金地金等を売却した場合の所得は、「総合課税」となり、所有期間に応じて次の算式により計算されます。
①短期譲渡所得(所有期間が5年以内のもの)
譲渡対価の額 - (取得費 + 譲渡費用) - 500,000円
②長期譲渡所得(所有期間が5年超のもの)
{譲渡対価の額 - (取得費 + 譲渡費用) - 500,000円} × 1/2
※1 総合課税の譲渡所得の場合、所有期間は、「取得の日」から「譲渡の日」までの期間で判定します。
※2 同一年に①及び②の譲渡所得の両方がある場合の控除額500,000円は、①及び②各々から500,000円ずつ控除するのではなく、①及び②両方の合計で500,000円までとなります。
控除の順番は、①の譲渡益から先に控除し、控除しきれない金額がある場合には、その控除しきれなかった金額を②の譲渡益から控除します。
(2)取得費の計算
取得費は購入時の購入対価の額となります。相続等により取得した場合には、被相続人等が当時購入した対価の額となり、購入対価の額が不明な場合には「譲渡対価の額の5%相当額」が取得費となります。
また、相続した金地金等につきましても、その相続税の申告期限から3年以内に譲渡したものについては「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(国税庁No.3267)の適用が可能です。
(3)金定額購入システム
金定額購入システムとは、毎月決まった金額で同一品質の金地金を継続的に投資する純金積立をいいます。
金定額購入システムにより購入した金地金等を譲渡した場合の譲渡所得は上記計算方法とは異なり、「所有期間」及び「取得費」は下記の方法により計算することができます。
①所有期間の判定
金定額購入システムは、単価が変動する同一品質の金地金を一定額で毎日購入し、その同一品質のものを売却するため、「先に取得したものから順次譲渡」したものとして差支えないものとされています。
②取得費の算定方法
取得費は原則として譲渡した資産の個別の取得価額となりますが、金定額購入システムにより購入された金地金については、顧客別に管理されておらず、譲渡資産と取得資産が個別に対応されていないため、個別の取得費を算定することが困難となります。
しかし、金定額購入システムについては、同一品質である金地金を一定額で購入しているため、これを売却する場合には、「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」(国税庁No.1466)に準じて、「総平均法」に準ずる方法により算出して差支えないものとされています。
(4)金地金の取引に関する調査事績
平成24年から地金等の売買を業として行う者が、国内においてそれらの譲渡を受け、200万円超の対価を支払う場合には、税務署に対して「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を提出することが義務付けられています。
国税庁のホームページでも、支払調書の他、あらゆる機会を通じて資料情報を収集するなどして、積極的に調査を実施する旨の明記や、金地金等の譲渡所得について下記調査実績を公表しています。
近年は下記調査期間と比較して金地金等の価額が大幅に上昇していることから、調査はより強化され申告漏れや脱税の指摘のターゲットになっています。「支払調書の提出がされない金額の取引であるからバレない」等という認識は持たず、正しい申告をするよう心がけてください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)