【No1065】「貸付用不動産の評価」の法令解釈通達(案)を公表

法令解釈通達の改正が決定していた「貸付用不動産の評価」について、意見公募手続を実施するため、財産評価基本通達(以下「通達」とします。)案が国税庁から発表されました。これについて、具体的に確認できた部分を解説します。

1.通達新設の背景と趣旨

近年、一棟賃貸マンションや不動産小口化商品を利用し、市場価格と相続税評価額の大きな乖離を利用した節税対策が行われてきました。国税庁はこれまで通達6項を用いて個別に対応してきましたが、訴訟の増加や、納税者の予見可能性を損なうといった批判がありました。そのため、取引実態を反映した評価方法に見直し、評価の適正化と予測可能性の向上を図るべく通達が新設されます。

2.適用開始時期

令和9年(2027年)1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価から適用されます。

3.課税時期前5年以内に取得等された貸付用不動産の評価

相続等が発生する直前に取得又は新築(以下「取得等」とします。)した貸付用不動産の評価方法については、次の評価ルールが設けられます。

(1)対象財産

課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得等された貸付用不動産が対象となります。

貸付用不動産とは、その全部若しくは一部が借家権の目的となっている家屋(当該家屋とともに賃貸されている附属設備又は構築物を含みます。)又は当該家屋の敷地の用に供されている宅地、借地権等(当該宅地、借地権等とともに賃貸されている土地等を含みます。)が該当します。

家屋に増築、改築等があった場合、増改築の対象となった家屋が「取得等から5年以内」であれば、当該増改築部分にも新ルールが適用されます。

(2)評価方法

原則:課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」により評価

例外(取得価額に基づく評価):当該不動産の取得価額が、取得時における通常の取引価額に相当すると認められる場合は、以下の方法で算出した金額の「100分の80(80%)」により評価することが可能

①土地等

取得価額 × 地価変動率( PX / PN )
 
PX 課税時期の属する年に係る評価基準額
PN 土地等の取得の時の属する年に係る評価基準額
上記の「評価基準額」とは、路線価が付されている場合には当該路線価、それ以外の場合には倍率方式により評価した当該土地等の価額に相当する金額をいいます。また、これらにより地価変動率を求めることが不適当と認められる場合には、公示価格の標準地の価格(その他公的機関の価格情報で当該土地等と地価事情が類似すると認められるもの)をいいます。

②家屋等

取得価額 - (取得時から課税時期までの償却費の額又は減価の額の合計)

「償却費の額」は、償却方法を定額法とし、減価償却資産の法定耐用年数を使用し、計算します。なお、家屋等の取得等の時から課税時期までの期間に1年未満の端数がある場合には、その端数は1年(切り上げて)計算します。

③適用除外となる主なケース

課税上弊害がない限り、以下については上記の適用から除外され、従来の通達による評価となります。

・収用等に伴う代替資産の取得、固定資産の交換特例、特定の事業用資産の買換え特例などの適用を受けたもの。

・通達制定日(令和8年予定)までに新築された家屋等(請負契約等が締結され、同日において新築に係る工事が行われ、かつ、費用の全部又は一部が支払われている建築中のものを含む)。

・取引相場のない株式の評価における純資産価額における不動産の評価。

4.特定小口化商品の評価

信託受益権などの不動産小口化商品については、次の評価ルールが設けられます。

(1)対象財産

不動産特定共同事業契約に基づく収益分配を受ける権利や、不動産の管理及び処分を行うことを目的とする信託に係る信託受益などが対象となります。

(2)評価方法

原則:契約の目的となっている貸付用不動産の課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」により評価

例外(特例的な評価方法):特定小口化商品の「元本等相当額」が適正な価格情報に基づくと認められる場合は、精通者意見価格等を参酌し評価(次に掲げるP1の金額によって評価、また、次に掲げるP2又はP3の金額が明らかであるときは、P1、P2又はP3のうち最も低いもの)

P1 元本等相当額の90%に相当する金額
ただし、事業開始後5年以内の場合は、土地の地価変動率や家屋の減価償却等を反映させた修正金額の95%に相当する金額
P2 課税時期における貸付用不動産の精通者意見価格
P3 課税時期前1年以内の鑑定評価による貸付用不動産の鑑定評価額の95%に相当する金額

事業者の破綻等により特定小口化商品に係る事業継続が著しく困難であり、かつ精通者意見価格等がない場合は、上記3に準じて評価します。

5.留意点

本通達の施行により、相続開始直前の駆け込みで不動産を取得し、相続税の節税を図るという節税は基本的には難しくなります。しかし、現在建築等を進められているプロジェクトがあれば、通達制定日前に請負契約の締結及び建築の着工、一部の費用支払いが行われていれば経過措置対応が可能となる可能性があり、当該経過措置を受けられれば新ルールの適用が除外されることになります。

また、今回の通達適用開始は令和9年1月1日となっています。そのため、それまでに財産を贈与するなどの対策を検討されている場合があると思われますが、適用日前であっても、減税対策の意図が明確な事案については、「総則6項」を用いて個別に否認(時価評価)されるリスクが残っていることに注意が必要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)