【No734】暗号資産(仮想通貨)に関する課税関係(個人所有の場合)

 暗号資産(仮想通貨)で代表的なビットコイン価格が11月18日急伸し、1万8000ドル(約187万円)を上回り、急騰に沸いた2017年12月以来の水準を回復し、時価総額は過去最大になりました。コロナウイルスの感染拡大などを背景に、現金を使わずにすむデジタル決済を利用する動きが加速している現在、暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン等が再び急騰し話題となっているため、個人で保有している場合の課税関係の取扱いについて説明します。

1.暗号資産(仮想通貨)取引の課税の取扱い

 仮想通貨で商品等の購入をした場合、現金化した場合、他の仮想通貨と交換した場合などに、その時点の仮想通貨の時価と取得費等の差額が所得として認識されます。所有者が個人の場合、仮想通貨取引によって生じた所得は原則として雑所得に区分されます。

 サラリーマンの方など普段確定申告を要しない方でも仮想通貨の取引で得た利益が20万円を超える場合は確定申告の必要があります。

【仮想通貨の所得計算方法】

仮想通貨利用時等の時価相当額 - 必要経費

 必要経費には、仮想通貨の取得価額や購入時の手数料、売却時の手数料の他、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。

 また仮想通貨の取得価額が分からない場合には、売却価額の5%相当額とすることが認められます。

2. 暗号資産(仮想通貨)取引の所得区分

 仮想通貨取引により生じた損益は、下記(1)または(2)に該当する場合を除き、雑所得に区分されます。

 (1)その仮想通貨取引自体が事業と認められる場合(注1)

 (2)その仮想通貨取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(注2) 

 (注1)仮想通貨取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合などが該当し、この場合は事業所得に区分されます。

 (注2)事業を営んでいる所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として仮想通貨を使用した場合が該当します。

 また仮想通貨取引による所得は給与所得など他の所得と合計した金額により課税されます。例えば年間の給与所得が1,000万円、仮想通貨取引による所得が500万円の場合、2つの所得額を合計した1,500万円となり、この金額から所得控除額などを差し引いた課税所得金額に対して課税されます。

3. 暗号資産(仮想通貨)取引で損失が生じた場合の取扱い

 雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(損益通算する)ことはできません。

 所得税法上、他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られます。

 また損失は翌年以降に繰り越すことができません。

4. 財産債務調書及び国外財産調書への記載の要否

 年末時点で暗号資産(仮想通貨)を保有している方が、所得税の確定申告書とともに下記の書類を提出する場合の取扱いについては以下のとおりとなります。下記の(1)財産債務調書及び(2)国外財産調書の提出義務の要件については、割愛させて頂きます。

(1)財産債務調書

 決済法第2条第5項に規定する仮想通貨などの財産的価値のある仮想通貨を 12 月 31 日において保有している場合、財産債務調書への記載が必要になります。仮想通貨を預けている仮想通貨取引所の所在が国内か国外かについては、財産債務調書への記載の要否に影響はありません。

(2)国外財産調書

 仮想通貨は、国外送金等調書規則第 12 条第3項第6号の規定により、財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在により国外にあるかどうかを判定する財産に該当します。また、国外財産調書は、居住者の方(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非永住者の方を除きます。)が提出することとされています。したがって、居住者の方が国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は、「国外にある財産」 とはなりませんので、国外財産調書への記載の対象にはなりません。

(担当:井津上 栄治)