【No748】不動産オーナーに影響のある民法改正後の内容

 令和2年4月1日に施行された民法改正等により、債務の保証に対する考え方、取扱いが変化してきています。今回は、不動産オーナーに影響がある内容をいくつか解説します。

1.連帯保証人のあり方

◎連帯保証人になるには公証人による意思確認が必要

 個人が保証人となる保証契約のうち、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約については、原則として保証人になろうとする者が一定の方式に従って公正証書により保証債務を履行する意思を表示して行わなければ、効力を生じないことになります。(民法465条の6)

 上記には一定の例外が設けられており、主債務者の取締役や総株主の議決権の過半数を有する者、あるいは、主債務者が個人事業主である場合の共同事業者や主債務者が行う事業に従事している主債務者の配偶者などが保証人となる保証契約については、いわゆる経営者保証又はそれに準じるものとして、適用除外されます。(民法465条)

 つまり、一定の個人を保証人とする保証契約について、公正証書による意思表示の手続をとらない限り無効とする規定ですが、適用範囲は限定されており、①法人による保証、②前述の経営者保証の例外に該当する場合、③貸金等債務以外を主債務とする保証や④主債務者が事業のため以外の目的で負担した貸金等債務を主債務とする保証は、この規定の対象とはなりません。なお、この規定は令和2年4月1日以後に締結された契約から適用となっています。

【今後の流れ】

 これまでは、相続により不動産賃貸業を承継する場合に、承継する本人だけでなく、その配偶者や子が保証人となることが頻繁に行われてきましたが、近年では金融庁から融資を行う金融機関等に対し「経営者保証に関するガイドライン」が出されており、事業承継時に審査を再度行い、必要以上の保証人契約がないように指導が行われています。さらに、個人の保証人契約が公正証書による手続を必要とすることで金融機関は事務処理等の負担を回避するため、今後は増々保証人契約が減少することが予想されます。

 もちろん、保証人の要・不要を審査し判断するのは金融機関ですから、不動産担保が保証に足りていないなどの状況であれば、保証人を求められることになります。

2.賃貸借契約の保証人

◎極度額の設定

 「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約 」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る 極度額を限度として、その履行をする責任を負う。」、さらに「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。」と規定されました。(民法465条の2)

 つまり、個人を保証人とする保証契約について、保証する金額を明確に定めて契約しない限りは、その保証契約が無効となります。なお、この規定は令和2年4月1日以後に締結された契約から適用となっています。

【今後の必要な対応】

 不動産を賃貸するにあたり、通常「賃貸借契約書」を作成する際に借主に保証人を設定することが一般的で、保証人が賃料等を滞納、不動産に損害を与えた場合などに、借主自身で負担が難しいときの保証となっています。これまでの賃貸借契約書には、保証人が保証する金額を明確に定めて契約されているものはほとんどなく、そういった契約書を今後も使い続けると保証契約が無効となります。つまり、賃貸借契約書に、保証する金額を「100万円の範囲で」、「家賃等の3年分に相当する金額の範囲で」などの記載をする必要があります。(極端な金額設定は認められない場合が考えられます。)なお、近年は保証人に保証会社契約する場合が多く、この場合は契約書に保証する金額を明確に記載する必要はありません。

 また、令和2年3月31日以前に契約したものについて変更の必要はありませんが、契約更新の際の継続契約についても対象となることにご注意ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)