【No747】~所得税の確定申告における注意点~ 平成21年及び平成22年に取得した土地等の 長期譲渡所得の1,000万円特別控除制度

 不動産の譲渡所得の計算においては、様々な特例が設けられていますが、適用漏れに注意しなければならない特例の一つとして、「特定期間に取得した土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の1,000万円の特別控除」の制度があります。

 この特例は、個人が、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した土地等を譲渡した場合において、譲渡所得金額から1,000万円の特別控除を受けることができる制度です。

 当該特例の適用においては、この特例の適用を受けようとすることを記載した確定申告書を提出することが必要ですので、取得時期を確認のうえ、適用漏れのないように申告することが大切です。

1.特例の概要

 個人が、平成21年に取得した国内にある土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)を平成27年以降に譲渡した場合又は平成22年中に取得した土地等を平成28年以降に譲渡した場合には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができます。譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額になります。(措法35の2)

2.特例の適用要件

 特例を受けるための要件は以下の5つです。

 (1) 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること。なお、対象土地等の所有期間中の用途は問われません。

 (2) 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。

 (3) 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。

 特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

 (4) 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。

 (5) 譲渡した土地等について、下記の特例の適用を受けていないこと。

  ①固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例

  ②収用交換等の場合の5,000万円の特別控除

  ③居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除   など

3.他の課税の特例の適用関係

 その年中に譲渡した1,000万円の特別控除の対象となる土地等の全部又は一部につき、次の特例を適用している場合には、この特例を適用できないこととされています。

 ①収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

 ②特定の居住用財産の買換えの特例

 ③特定の事業用資産の買換え及び交換の特例      など

4.特例の適用受けるための手続

 この特例を受けるためには、特例を受ける旨記載した確定申告書を提出することが必要です。なお、申告には以下の書類の添付が必要となります。

 (1) 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

 (2) 土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなどで、譲渡した土地等が平成21年又は平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類

5.申告における注意点

 当該特例が創設された際には不動産価格が低迷していた時期でしたが、下記の公示価格の変動を見ても明らかなように、不動産価格の上昇傾向が見られます。

 不動産の譲渡所得の申告において、長期譲渡所得に該当するかの判断も必要なことから、取得時期は必ず確認するポイントではあるかと思いますが、併せて取得時期が平成21年から平成22年に該当していないかの確認も行うことが大切です。

 なお、法人においても同様の特例がありますが、取得時期を確認せずに申告しているケースも多いため、法人で取得した土地等についても取得時期を確認のうえ、申告することが必要です。

(国土交通省 地価公示の変動率及び平均価格の時系列推移表より抜粋)

(注)平均価格は地点ごとの1平方メートル当たりの価格の合計を総地点数で除して求めたもの(十の位で四捨五入し百円単位まで求めたもの。)です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)