【No871】インボイス制度の概要及び経過措置について

 令和5年10月1日からの適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)の導入に向けて、令和3年10月1日から適格請求書発行事業者の受付が開始されました。今回はそのインボイス制度の概要及び経過措置についてご説明します。

1. インボイス制度の概要

 令和5年10月1日以後、区分記載請求書等保存方式における請求書等の保存に代えて、「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書等」の保存が仕入税額控除の要件となります。適格請求書発行事業者は、取引の相手方である課税事業者から求められた場合、適格請求書等の交付及び写しの保存が義務付けられます。適格請求書には、区分記載請求書の記載事項に加え、適格請求書発行事業者登録番号、適用税率及び税率ごとに区分して合計した消費税額等を記載する必要があります。また、適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」といいます。)開始後、6年間(令和5年10月から令和11年9月までの間)は、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。なお、この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存とこの経過措置の適用を受ける旨(80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要です。

 この経過措置を適用できる期間等は、次のとおりです。

 ・令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%

 ・ 令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%

2. 適格請求書発行事業者になるには

 適格請求書発行事業者になるには、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要があります。

 適格請求書(インボイス)は、税務署から登録を受けた「適格請求書発行事業者」しか交付することができません。また、適格請求書発行事業者は、課税事業者(=消費税の申告・納税義務あり)でなければその登録を受けることができません

 よって免税事業者(=消費税の申告・納税義務なし)は、インボイスを交付することができません。

 インボイス制度が始まる令和5年10月1日から登録を受けようとする事業者は、原則として令和5年3月31日までに納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出する必要があります。

 ※納税義務の判定

 消費税の納税義務者は、個人事業者や法人となりますが、小規模事業者の事務負担を軽減するため、その課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則として納税義務が免除されることになっています。

 新たに設立された法人については、基準期間が存在しないため、設立1期目及び2期目は原則として免税事業者となります。しかし、その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人について、その基準期間がない事業年度は、納税義務が免除されないこととなっています。

(注1)基準期間が1年でない法人の場合は、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で除して計算した金額に12を乗じて計算した金額により判定します。

(注2)その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間)における課税売上高等が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。

3. 免税事業者に係る登録の経過措置

 免税事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から自動的に課税事業者となる経過措置が設けられています。この場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出を省略することが可能となります。

4. まとめ

 免税事業者の方は、このまま免税事業者でいるか課税事業者になるのかを税理士等の専門家も交え一度検討してみることをおすすめします。

 免税事業者のままでいたために、取引先や売り上げが減少となってしまうなど消費税の納税以上のデメリットが発生する可能性がございます。免税事業者のままでいる場合、課税事業者となる場合のメリットとデメリット、双方を踏まえたうえで慎重に検討することが大切です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)