【No899】令和5年 公示価格発表

 令和5年3月23日に国土交通省より令和5年地価公示が発表されました。地価公示とは、地価公示法に基づき毎年1月1日時点の地価(「正常な価格」)を、住宅地・宅地見込地・商業地・準工業地・工業地・市街化調整区域内宅地などの地域に分け、不動産鑑定士等が評価し国土交通省が3月末頃に公表するものであり、一般の土地の取引価格に対して指標を与えるとともに、公共事業用地の取引価格の算定等の規準とすることを目的に行われています。令和5年の標準地の設定数は、市街化区域20,563点、市街化調整区域1,373地点、その他の都市計画区域4,047地点、都市計画区域外の公示区域17地点の計26,000地点となっています。

<令和5年公示価格の動向>

 令和3年から令和5年の公示価格を前年と比較した変動率は以下のとおりです。

 都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移は以下のとおりです。

【全国平均】

 全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。

 新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、ウィズコロナの下で景気が緩やかに持ち直している中、地域や用途などにより差があるものの、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となりました。

【三大都市圏平均】

 三大都市圏平均でみると、全用途平均・住宅地は、東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、商業地は、東京圏、名古屋圏で2年連続で上昇し、上昇率が拡大するとともに、大阪圏では3年ぶりに上昇に転じました。

【地方圏平均】

 全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し。上昇率が拡大しました。また、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。その他の地域では、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じました。

【概括】

 住宅地については、土地中心部や生活利便性に優れた地域では、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあり、住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続しています。また、生活スタイルの変化による需要者のニーズの多様化により、郊外部にも上昇範囲が拡大しており、地方四市においても上昇率が拡大しており、四市の中心部の地価上昇に伴い需要が波及した周辺の市町では、高い上昇率を見せています。

 商業地については、都市部を中心に、店舗需要は回復傾向にあり、また、堅調なオフィス需要やマンション用地需要等から地価の回復傾向がより進んでいます。また、三大都市圏や地方四市等の再開発事業等が進展している地域では、利便性・繁華性向上への期待感から地価上昇が継続しています。
 国内来訪客が戻りつつある観光地や、人流が回復しつつある繁華街では、店舗棟の需要の回復が見られており、多くの地域で地価は回復傾向にあります。地価公示は、相続税や固定資産税等の評価額に広く影響を及ぼすことから、今後も継続して動向を注視する必要がありそうです。

(文責:税理士法人FP総合研究所)