【No301】連結納税制度からグループ通算制度へ‥御社への影響は?

令和2年度税制改正により、令和4年度から「連結納税制度」は「グループ通算制度」と移行されます。 親法人が100%出資する子法人をお持ちのご法人で、検討すべき点を考察しましたので、ご参照ください。

具体的には、これまで65万円控除を受けていた方について、令和2年分以降も引き続き65万円控除を受けるためには、さらに要件が新たに加えられ、その要件を満たさない場合には、令和2年分以降は、青色申告特別控除額が65万円から55万円に引き下げられることになります。よって、今回はその要件と手続きについて確認します。

1.改正概要

連結納税制度は、親会社とその直接または間接に 100%の株式を保有するすべての子会社(外国法人を除く)から 成る企業グループの一体性に着目し、納税単位を企業グループ(「連結グループ」)とする制度です。 今回の改正により、事務負担の軽減等の観点から、グループ内において損益通算を可能とする基本的な枠組みを維 持しつつ、親会社、完全子会社のそれぞれが申告・納税を行う「グループ通算制度」となります。 近年の多様化するグループ経営を踏まえ、機動的な事業再編・効率的なグループ経営を後押しするため、連結グル ープへの加入時の時価評価課税や繰越欠損金の切り捨ての対象を縮小するなどの見直しも行われています。

2.現行制度との比較

  連結納税制度(現行) グループ通算制度(令和4年度~)
納税主体

連結納税グループ(連結親法人が納税主体となる連結申告)

(一体申告)

親法人および各子法人(個別申告)
事業年度(税務上) 連結親法人の事業年度に合わせたみなし事業年度 連結納税制度と同様
所得金額の計算 連結グループ内の連結法人の単体所得金額を基礎として、連結法人ごと又は連結グループ全体で一定の調整を行った金額を連結所得金額として算出 欠損法人の当期欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。
考え方 グループの所得金額と欠損金額を合算する 欠損法人は欠損金額を所得法人に移転し、所得法人は欠損金額の移転を受ける
税額の調整 連結所得から算出された税額を各法人に配分・調整等を行い、連結グループ全体の調整を行う 各法人の算出税額に通算グループ全体の調整を行う
欠損金の繰越控除 連結所得金額の50%相当額(連結親法人が中小法人等の場合は100%)を限度とし、連結所得から控除する 通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得金額の50%相当額(中小法人等の場合は 100%)を各法人から控除する
中小法人の判定 連結親法人のみで判定 通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合には、その通算グループ内のすべての法人が中小法人に該当しない
修正・更生 連結グループ全体で再計算等を行い、親法人 にて修正申告等を行う 各法人にて修正申告等を行う
離脱 離脱法人は5年間再加入できない離脱法人はその資産を帳簿価額のまま持ち出 すことができる 離脱法人は5年間再加入できない 離脱法人が主要な事業を継続することが見込まれていない場合には、直前の事業年度にお いて、時価評価により評価損益の計上をする

3.適用時期と経過措置

(1)適用時期        令和4年(2022 年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

(2)経過措置

  連結納税制度からの移行に伴い、次のような経過措置が設けられます。 

  • 連結納税制度の承認は令和4年4月1日以後に開始する事業年度においては、グループ通算制度の承認とみ なされます。
  • 連結法人は連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができます。
  • 連結納税制度における特定連結欠損金個別帰属額(特定連結欠損金に係る連結欠損金の個別帰属額)は、グルー プ通算制度における特定欠損金とみなされます。
  • 連結納税制度における非特定連結欠損金個別帰属額は、グループ通算制度における非特定欠損金額となります。 新制度では、親法人にも(注)SRLYルールが適用されますが、現行の連結納税制度における親法人の繰越欠損金(非特定連結欠損金個別帰属額)については、SRLY ルールが適用されない欠損金額として新制度に持ち込むことができます。 

(注)欠損金の繰越控除を自己の所得の範囲に限定するルール

4.検討事項

(1)御社が現在、連結納税制度を適用している法人である場合

グループ通算制度を適用しない単体納税法人になることを選択する場合には、令和4年4月1日以後最初に開 始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書をします。通常、一度連結納税制度を適用した場合には取止めが難しいといわれていますので、これはチャンスといえます。

(2)連結納税制度を適用していない御法人で、親法人に大きな繰越欠損金がある場合

現行制度では、親法人の欠損金については、連結納税制度を適用前の欠損金については、非特定連結欠損金としてグループ内の黒字と相殺できるしくみになっています。グループ通算制度では、特定連結欠損金として親会社のみの黒字からのみ相殺していくSRLY ルールが適用されます。

但し、グループ通算制度の施行前に連結納税制度を採用している場合には、親法人の開始前の繰越欠損金は、グ ループ通算制度になった場合にも非特定連結欠損金として持ち込むことができます。非特定連結欠損金はその法人 の所得の金額を限度とせずに控除ができるので、税効果が見込める欠損金です。

(文責:松岡美津枝)