【No446】インボイス制度 ~ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の 帳簿への一定の記載事項 ~

 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送などは、請求書等の交付を受けることが困難な場合もあり、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で請求書等の保存なく仕入税額控除を行うことができます。

1.適格請求書等保存方式における帳簿に記載が必要な事項

 区分記載請求書等保存方式の下での帳簿の記載事項と同様に、適格請求書等保存方式の下でも、帳簿及び請求書等の保存が要件とされており、保存すべき帳簿の記載事項については次のとおりです。

① 課税仕入れの相手方の氏名又は名称

② 課税仕入れを行った年月日

③ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容

(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)

④ 課税仕入れに係る支払対価の額

2.帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項

 次の取引については、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①、消規15の4)。

① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引

③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入

④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得

⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入

⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入

⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限ります。)

⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

この場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨

  例:①に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」

    ②に該当する場合、「入場券等」

・ 仕入れの相手方の住所又は所在地(一定の者を除きます。)

  例:⑦に該当する場合、「〇〇市 自販機」「××銀行□□支店ATM」

(注) 帳簿に仕入れの相手方の住所又は所在地の記載が不要な一定の者は、次のとおりです(令和5年国税庁告示第26号)。

イ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送について、その運送を行った者

ロ 適格請求書の交付義務が免除される郵便役務の提供について、その郵便役務の提供を行った者

ハ 課税仕入れに該当する出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)を支払った場合の当該出張旅費等を受領した使用人等

ニ 上記③から⑥の課税仕入れ(③から⑤に係る課税仕入れについては、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により、業務に関する帳簿等へ相手方の氏名及び住所を記載することとされているもの以外のものに限り、⑥に係る課税仕入れについては、事業者以外の者から受けるものに限ります。)を行った場合の当該課税仕入れの相手方

 よく見受けられるケースである2.①、⑦、⑨を例として、上記の帳簿の記載事項をまとめると以下のようになります。

【出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A」 問104、109、110」

(文責:税理士法人FP総合研究所)