【No523】「2025年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」~ 成長・持続的発展に向けての有効な取組みとは
円安・物価高・生産・投資コスト増、構造的な人手不足など、激変する環境において、従来のやり方では、現状維持も困難であり、自社の現状を把握して適切な対策を打つことが必要です。
中小企業白書から経営者の「経営力」の向上が重要であることが確認できます。
1.「経営力」の3つの要素(A・B・C)による分析
(1)A 個人特性面
経営者が学び直し(リスキリング)を通じて経営力の向上に取り組む成長意欲の高い企業は、実際に売上高が増加している傾向と経営者の成長志向が社内に浸透することで従業員の意識が変わり、付加価値向上にも繋がっていることが白書の報告からも読み取れます。
(2)B 戦略策定面
変化の中で成長・発展を実現するためには、経営計画策定・差別化が必要です。
実際に、長期を見据えた経営計画を策定・実行している企業ほど、付加価値額が大きく増加しています。
市場環境を意識した、自社の製品・商品・サービスの差別化が自社の競争力の強化にも繋がり、価格転嫁の実現度合いに影響していることが白書の報告からも読み取れます。
(販売価格の転嫁状況 差別化・市場環境への意識状況別)
(3)C 組織人材面
経営理念、業績・経営情報の共有を重視し、賃上げ、社内コミュニケーション円滑化、働き方・職場環境改善など従業員を大切にする人材経営は従業員の確保・維持に貢献しています。
2.速度の経済性
(1)差別化戦略
差別化戦略は、他社との差別化を図ることで競争優位を実現しようとするもので、 競争優位性には規模の経済性や範囲の経済性、ブランドなど独自の経営資源、経験曲線効果などがありますが「速さ」を表す「速度の経済性」も差別化のひとつとして、考慮される必要性があります。
(2)速度の経済性
ビジネスのスピードを上げることで得られる経済的な利益を指し、具体的には、情報収集、開発、 生産、販売などのプロセスを迅速化することで、競争優位の獲得、機会損失の削減、コスト削減など、様々な経済的効果が期待できます。
①先行者優位の獲得
スピードを活かして市場に先行することで、競合他社を圧倒し、顧客からの支持を得ることができます.
②機会損失の削減
製品開発や販売のリードタイムを短縮することで、市場の変化に対応しやすくなり、機会損失を減らすことができます.
③コスト削減
効率的なプロセスを構築することで、人件費や在庫管理費などのコストを削減できます.
④投資効率の向上
素早い意思決定によって投資の回収を早め、投資効率を向上させることができます.
⑤顧客価値の向上
迅速な対応と高品質な製品やサービス提供により、顧客満足度を向上させることができます.
(出典:中小企業白書)
(文責:税理士法人FP総合研究所)