【No524】社長の海外視察旅行費用の注意点 その2(海外渡航費用の税務上の取り扱い)

昨今において、中小企業といえどもビジネスチャンスを求めて、積極的に海外進出を考えている会社も多くあります。その際、トップ営業として、社長自ら海外の取引先との交渉のために、海外に赴くことも考えられます。そこで、社長が海外視察等を行う場合の海外視察費用・渡航費用について、どのような点に注意をしておけば良いのか、税務上の取り扱いを確認するとともに、会社としてどのような対策を行っておけば良いかを確認します。

「社長の海外視察旅行費用の注意点 その1」では、海外渡航費が会社の経費として認められるかどうか否かについて、①業務の遂行上必要な旅行か否か?②その旅行の渡航のため通常必要と認められる部分の金額を超えているか否か?の二つの点を判断基準とすることを確認しました。今回は、この二つの点について詳しく確認します。

1.業務の遂行上必要な旅行か否かの判定

会社の役員または社員の海外渡航が会社の業務の遂行上必要なものか否かについては、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を勘案して、実質的に判定するものとされています。

しかし、次に掲げる海外渡航は、原則として、会社の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しないものとする形式基準が定められています。(法基通9-7-7)

①観光渡航の許可を得て行う旅行

②旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行

③同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で、主として観光目的と認められるもの

これら①~③に該当する海外渡航については、基本的には業務の遂行上必要な旅行とは認められません。

ただし、前述した①~③の形式基準に該当しても、その海外渡航の旅行期間内における旅行先、行った仕事の内容等からみて、自社の業務にとって直接関連するものがあると認められる場合には、その海外渡航に要する旅費のうち、業務に直接関連する部分の旅行について要した費用の額は、旅費として損金の額に算入することができるとされています。(法基通9-7-10)

2.通常必要と認められる部分の金額とは?

税務調査では、日当や仕度金等について、その支給額が通常必要と認められるか否か?が、多くの場合、問題となります。これは、航空運賃や宿泊料は実費精算が可能であることに対して、日当や仕度金等については、会社が独自に設定でき、そこに恣意性が介入するため、その支給額の適否について指摘を受けることになります。

日当や仕度金等については、旅行先の物価事情、旅行目的、旅行期間等を勘案して、実質的にその支給額が通常必要と認められる金額か否かを判断することされています。常識を超えるような、あまりにも高額な日当や仕度金等の支給については、その超える部分の金額について、会社の経費として認められない、あるいは、支給を受けた従業員の給与として課税されることが考えられます。

3.税務調査等において否認されないための対応策

業務の遂行上必要な旅行か否か?また、海外渡航費用が通常必要と認められるか否か?の判断については、ほとんどが、実質判定になります。適否の判断を行うにあたって、形式的な基準が与えられているわけではありませんので、会社としては悩ましい点かと思います。

そこで、税務調査で否認を受けないためには、最低限、以下の点に気を付ける必要があります。

①海外出張旅費規程等を作成し、海外渡航費の計算の基礎となる運賃、日当、仕度金等を規定する

②自社で作成した海外出張旅費規程どおりに、その基準にしたがって支給を行使する

③海外出張を行った場合には、行程表、旅行先での業務内容、商談内容等を記録した報告書等の作成・保存を行う

(文責:税理士法人FP総合研究所)