【No542】ふるさと納税の返礼品への課税
年末も近づき、今年のご自身の所得見込額に基づいてふるさと納税の上限額(実質負担が2,000円に収まる寄附金額)を試算して、ふるさと納税をされる方も多いと思います。
ふるさと納税に伴う寄附先の自治体からの返礼品については、所得税等の課税の対象になります。
このふるさと納税の返戻品に係る所得の申告漏れを税務署から指摘されるケースが散見されますので、課税関係について確認しておきましょう。
1.ふるさと納税の返礼品に係る課税関係
<事例>
A市では、市外に在住する者から1万円以上の寄附を受けた場合、この寄附に対する謝礼として、市の特産品(3,000円程度)を送ることとし、総務省からふるさと納税の対象となる団体の指定を受けています。
A市に対して10万円を寄附(ふるさと納税)した寄附者が受ける経済的利益について、課税関係は生じますか。
<回答>
寄附者が特産品を受けた場合の経済的利益は、一時所得に該当します。なお、その年中にこの特産品(30,000円程度)に係る一時所得のほかに一時所得に該当するものがないときには、課税関係は生じません。
一時所得には該当するものの、課税関係は生じないとはどういうことでしょうか。確認していきましょう。
2.一時所得とは
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時的な所得をいいます。
一時所得には、次のようなものがあります。
(1)懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
(2)競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
(3)生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4)法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
(6)資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
所得税法上、各種所得の金額の計算上収入すべき金額には、金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額も含まれます。ふるさと納税の謝礼として受ける特産品に係る経済的利益については、非課税所得のいずれにも該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので、法人からの贈与により取得するものと考えられます。
したがって、特産品に係る経済的利益は一時所得に該当します。
3.一時所得の計算方法
一時所得の金額は次のように計算します。
総収入金額 ― 収入を得るために支出した金額(注1) ― 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
(注1) その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
4.税額の計算方法
一時所得は、その所得金額の2分の1に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
上記1の事例では、
30,000円 - 0円 - 30,000円(注2) = 0円 ×1/2 =0円
一時所得の金額は3万円となりますが、所得金額が生じないため課税関係が生じないこととなります。
(注2)3万<50万 ∴3万円
ちなみに特別控除額50万円を超える返礼品を受け取ることとなる寄附金額の目安は上記のA市の場合は167万円(=50万円÷0.3)となります。
自分は167万円もふるさと納税ができるような高額所得者ではないから大丈夫、とは限りません。
5.ふるさと納税の返礼品以外に一時所得がある場合は注意
ふるさと納税の返礼品以外に一時所得がある場合には全てを合算して一時所得の計算を行います。
よくあるのが生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等(上記2(3))を受け取っている場合です。
例えば上記1の寄附者が同年中に生命保険の一時金を120万円受け取っており、その保険に係る総支払保険料が60万円であった場合には一時所得の計算は以下のようになります。
(1,200,000円 + 30,000円)- 600,000円 - 500,000円 = 130,000円
一時所得の金額が130,000円となり、その所得金額を2分の1した65,000円が他の給与所得等に合算されて所得税等が計算されることになります。
なお、懸賞金付預貯金等の懸賞金等や、一時払養老保険、一時払損害保険等(保険期間が5年以内であるなど一定の要件を満たすもの)の差益等については、20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率による源泉分離課税が適用されます。
6.ふるさと納税の返礼品の収入計上時期
ふるさと納税の返礼品は、返礼品を受け取った年分の一時所得となります。
ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当しますが、一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるのが原則です。
例えば、令和7年12月にふるさと納税を行い、令和8年1月に返礼品を受け取った場合には、ふるさと納税の返礼品に係る一時所得は令和8年に帰属することになります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)