【No561】取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)の概要
国税庁は、令和8年4月20日に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回会議を開催しました 。本会議は、令和6年11月の会計検査院による指摘を受けたものであり、検査院の報告では、現行の評価制度について以下の問題点が指摘されています。
評価方式間の乖離:類似業種比準価額が純資産価額に比べ相当程度低く、規模の大きな会社ほど評価額が相対的に低く算定されている 。
還元率の乖離:配当還元方式の還元率(10%)が、近年の低金利水準に比べ高すぎるおそれがある 。
これらを踏まえ、相続税法の時価主義の下、社会経済の変化に応じた適正な評価制度の在り方を検討することが開催の目的とされています 。
1.開催の背景 会計検査院が指摘した「不公平」の実態
① 評価額の逆転現象
類似業種比準価額を適用する割合が高い「大会社」ほど、純資産価額に比べて株式評価額が相対的に低く算定されており、会社規模間での公平性が損なわれている。
② 金利水準との乖離
配当還元方式で用いられる「10%」という還元率は昭和39年の制定当時の金利を基にしており、近年の超低金利の実態を反映していない。
2.実態把握調査の結果 純資産価額との「4倍」の差
国税庁が実施した令和4年・5年分の申告データ分析により、以下の実態が明らかになりました。
① 価額のかい離
類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の約26.1%に留まっており、約4倍近い差が生じている。
② 規模別の申告評価額(中央値)
純資産価額を1.0とした場合の申告額は、大会社で0.44倍、中会社で0.50倍、小会社で0.60倍となっており、規模が大きいほど評価が圧縮されている。
③ 配当の機能不全
調査対象企業の82.4%が「無配」であり、株価を算定するための比準要素として配当が機能していない実態が浮き彫りとなった 。
3.専門委員による主な意見と論点
① 現行方式への批判と提案
(イ)単一方式の検討
「規模別の区分が評価額圧縮スキームに悪用されているため、幅広い企業に統一的に適用できる一つの評価方式を検討すべき」との意見が出されました 。
(ロ)インカム・アプローチの重視
研究開発投資などの「貸借対照表に現れない企業特性」を評価するため、収益力を重視した評価方法(DCF法等)へのシフトを検討すべきとの指摘がありました。
(ハ)清算価値と継続価値の差
「継続企業の評価に清算前提の純資産価額を用いるのは不合理であり、経営リスク(個人保証等)を負う次世代への承継においては、清算価値より低い評価額となるのが当然ではないか」との実務的な指摘もありました 。
② 租税回避スキームへの警戒
(イ)操作可能性の排除
種類株式(無議決権株式)の活用や、100%支配下のグループ内での資産移転による意図的な評価引き下げ(寄付修正スキーム等)に対し、制度面での対応が求められています 。
(ロ)納税者の予見可能性
評価通達6項(例外規定)による個別対応が増加している現状に対し、「納税者が事前に予測でき、適正な申告が行えるよう明確な規定を設けるべき」との声が上がりました 。
4.今後の見直しの方向性 4つの基本観点
会議では、以下の4点を柱に見直しを進める方針が示されました 。
① 『評価額の“崖”』の解消
異なる規模間での評価の不公平感をなくし、評価方式間の乖離を排除する 。
② 『今日的観点』からの見直し
金利変動を踏まえた還元率の適正化や、学術的な企業価値評価手法の参照 。
③ 『恣意性・操作性』の排除
配当や利益、会社規模を恣意的に操作して株価を圧縮するスキームを封じる 。
④ 第三者承継の動向反映
近年増加している第三者へのM&A実務における評価手法との整合性を図る 。
次回の第2回会議は、2026年5月11日(月)14時から開催される予定です 。事務局からは、より具体的な評価手法のあり方について検討を深めることが連絡されています。
(文責:税理士法人FP総合研究所)