【No569】固定資産を取得する際に補助金を受給した場合の圧縮記帳

中小企業が固定資産を取得する際に、国や自治体から補助金(「ものづくり補助金」など)を受給するケースが増えてきました。

中小企業が固定資産を取得し、補助金を受給した場合、通常であれば、補助金は全額、収益となり、固定資産については減価償却費として、その一部しか費用とならないため、多額の法人税等が発生します。せっかく補助金を得たのに税金で少なくなると非効率なため、税法上「圧縮記帳」という税負担を繰り延べる(先送りする)制度が用意されています。

1. 「圧縮記帳」とは?

圧縮記帳とは、国庫補助金等で取得した固定資産の取得価額から、補助金の額(圧縮限度額)を差し引く(圧縮する)ことで、補助金収入から、それに見合う「圧縮損(損失)」を減算し、その年の税負担を軽減する制度です。

税金が「免除」されるわけではなく、圧縮記帳はあくまで「税金の繰延べ(後回し)」です。資産の帳簿価額が下がるため、翌年以降に経費にできる「減価償却費」は少なくなります。結果として、将来の利益が増えて税金が増加するため、トータルの税負担は長期的には変わらないものとなります。補助金をもらった年にはキャッシュが手元に残るという大きなメリットがあります。

2. 2つの経理処理方法

 (1)直接減額方式(帳簿価額を直接下げる方法)

資産の金額を直接減額する、実務でよく使われる方法です。

<処理の流れ>

  1. 資産を購入時に通常の取得価額で計上。
  2. 補助金が入金(確定)時に「国庫補助金収入(収益)」を計上。
  3. 決算時に、補助金相当額を「固定資産圧縮損(費用)」として計上し、資産の帳簿価額を直接引き下げます。

<仕訳のイメージ>(3,000万円の機械を購入し、2,000万円の補助金をもらった場合)

機械購入        :機械装置 3,000万円/現金預金 3,000万円

補助金入金    :現金預金 2,000万円/国庫補助金収入 2,000万円

決算(圧縮記帳):固定資産圧縮損 2,000万円/機械装置 2,000万円

補助金収入2,000万と圧縮損2,000万が計上され、補助金収入による税額は増加しません。機械の帳簿価額は1,000万円になり、減価償却費はこの金額を取得費として計算されます。

処理の手間は楽ですが、資産が小さく見えてしまうといった点が特徴です。

 (2)積立金方式(貸借対照表の純資産に積み立てる方法)

資産の取得価額は実際の購入金額のまま、制度上のメリットだけを享受する方法です。固定資産の実際の取得価額を帳簿に反映したい場合に選ばれます。

<処理の流れ>

  1. 資産を購入時に通常の取得価額で計上。
  2. 補助金が入金(確定)時に「国庫補助金収入(収益)」を計上。
  3. 決算時に「固定資産圧縮損」は計上せず、繰越利益余剰金から補助金の金額を「圧縮積立金」として純資産の部に計上します。
  4. 法人税等の計算における税務調整にて、補助金の金額を「圧縮積立金認定損」として所得を減算することで税負担を抑えます。
  5. 翌期以降、減価償却費(実際の購入金額を取得価額としたもの)を計上する際に、その割合に応じて積立金を取り崩し、益金として所得に加算されます。

毎期の処理が煩雑となりますが、固定資産の金額は実際の購入額等が反映される点が特徴です。

3. 経営力強化税制などとの併用

経営力強化税制とは、中小企業等が「経営力向上計画」の認定を受け、生産性を高める設備(機械装置やソフトウェアなど)を取得した場合に、即時償却(全額をその年の経費にする)または、主には取得価額の7%の税額控除のどちらかを選択できる優遇制度です。

圧縮記帳と中小企業経営強化税制は併用が可能です。併用する場合、中小企業経営強化税制における即時償却を選択する場合には、上記、直接減額方式を例にすると、圧縮後の取得価額を初年度に即時償却ができることになります。

税額控除を選択する場合には、通常、実際に取得した金額を基に控除額を算定されますが、圧縮記帳を行っている場合には、圧縮後の取得価額を基に控除額が計算されることとなり、控除額は通常よりも減少することになります。

<併用時の注意点>

経営力強化税制を適用するためには、固定資産の種類ごとに「〇〇万円以上」という最低ライン(取得価額要件)が決められています。圧縮記帳を行った場合には、圧縮記帳をした後の金額で要件を満たしているか判定すると定められています。したがいまして、通常では経営力強化税制を適用できたのに、圧縮記帳をすることにより適用できなくなる可能性もあります。

 また経営力強化税制と同じような税制で「中小企業投資促進税制」がありますが、こちらは圧縮記帳との併用が不可となっていますので、ご注意ください。

4. 圧縮記帳の留意点

①確定申告書への別表を添付

圧縮記帳の適用を受けるためには、法人税の確定申告書に「国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書(別表13)」などを添付する必要があります。

②圧縮記帳の適用が可能な補助金かどうか

すべての補助金が圧縮記帳の対象になるわけではありません。対象となる補助金は、法人税法施行令79条に列挙されており、ここに記載されていない補助金では圧縮記帳はできません。

例として、ものづくり補助金などは対象ですが、一部の給付金などは対象外になることがあるため、必ず交付決定通知書や公募要領等においても「国庫補助金等」に該当するか確認する必要があります。

③補助金の「返還不要の確定」が条件

補助金の場合、その期末までに「返還しなくてよいこと」が確定している必要があります。

しかしながら、賃上げ要件未達による返還などがある場合には、法人税法第43条「国庫補助金等を取得した場合の特別勘定の設定」という救済措置があり、初年度は「特別勘定」という別の手続きを使って税金を繰り延べることになり、返還不要が確定した部分から順次、正式な圧縮記帳へと移行していくことになります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)