【No570】令和9年4月より適用の貸手側の新リース会計基準対応について
「新リース会計基準」は、令和9年(2027年)4月より「金融商品取引法に基づく財務諸表」に対して適用され、主に上場企業や大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)とその子会社・関連会社及び会計監査人を設置している企業がその対象となります。
「借手(利用側)の全オンバランス化」が注目を集めがちですが、顧客に代わって専用設備を構築・提供し、毎月の利用料として回収するビジネスモデルを展開している企業や分割払い型のサービスを提供する企業について「貸手側」の企業における資金繰り等の影響についてまとめてみました 。
1.売上計上のルール変更:「第2法(割賦基準)」の完全廃止
これまで、ファイナンス・リースにおいて(オペレーディング・リースの場合は引き続き賃貸借取引として支払賃借料の額を損金算入(法53))、リース料を受け取る時に売上高と売上原価を計上する方法「第2法」は、収益認識会計基準で割賦基準が認められなくなったことを受けて廃止されました 。それに伴い、法人税法上認められていた「リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(延払基準の特例)」も廃止されました 。今後は自社の事業実態に合わせ、新リース会計基準において引き続き認められる「第1法」及び「第3法」のいずれかの処理を適用することになります 。
(※)国税庁:新リース会計基準に対応する改正(貸手の処理)により抜粋

・販売・構築請負業とみなされる場合(第1法・改正後): 設備が完成し顧客に引き渡した時に、将来受け取る利用料の総額を「売上高」として一括計上します 。リース取引開始日に売上高(リース料から利息相当額を控除した額)と売上原価(帳簿価額)を計上し、各期の受取リース料のうち「利息相当額」を各期の損益として処理します 。
・金融・リース業とみなされる場合(第3法・継続): 引き渡し時の売上はゼロとなり、毎月の利用料に含まれる「利息(手数料)相当額」のみを売上(収益)として計上します 。これにより、表面上の売上高(トップライン)が激減して見えることになります 。実務上は第3法を継続適用となり、各期の受取リース料を「利息相当額」と「元本回収」に区分し、利息相当額を各期の損益として処理します 。
2.最大のリスクは「資金ショート」
会計上のルール変更に連動して、税務上でもこれまでの「延払基準の特例(入金時に税金を払う特例)」が廃止されます 。
特に「販売・構築請負業とみなされる場合(第1法)」に該当する場合、引き渡しを行った初年度に将来分の売上・利益が一括で計上されます 。その結果、「手元にはまだ1ヶ月分の利用料しか入っていないのに、数年分の利益に対する法人税等を一括で納付しなければならない」という事態に陥ります 。黒字であっても手元のキャッシュが急激に流出するため、「黒字倒産」に近い資金ショートのリスクが生じます 。
3.令和8年度中に進めるべき3つの対策
この問題は、適用直前に対処しようとしても間に合いません 。現在(2026年度)のうちに、以下の対応を進める必要があります 。
- 既存・新規契約の棚卸しと実態判定: 現在提供しているサービスや契約が、新基準において「リース」か「サービス提供(収益認識基準)」のどちらに該当するかを再判定します 。
- 売上計上タイミングと納税シミュレーション: 一括売上計上となる契約について、「いつ、いくらの税金が前倒しで発生するか」を算出し、必要に応じて金融機関へ運転資金(つなぎ融資)の相談を行います 。
- 今後のビジネスモデル・契約条件の見直し: 新規契約において、初年度に多めの頭金(初期費用)を頂く料金体系に変更する、あるいはリース契約ではなく「毎月売上を立てられるサービス契約」へと内容を再設計するなどの対策を検討します 。
新リース会計基準は、貸手企業にとって「税金支払いのキャッシュフロー」と「営業戦略」を根本から覆す重大な経営課題と言えます 。事前の緻密な対策が不可欠です 。
(文責:税理士法人FP総合研究所)