【No293】令和6年度厚生労働省予算概算要求について

 厚生労働省は、令和5年8月31日に令和6年度予算概算要求を発表しました。医療機関に関わる内容も多く含まれているため内容を抜粋してご案内します。

1.予算の総額について

 令和6年度要求額の総額については、一般会計で33兆7,275億円となり、令和5年度予算額33兆1,408億円と比べ5,866億円の増加となりました。特別会計については、労働保険特別会計が令和6年度要求額が4兆1,572億円となり、令和5年度予算額4兆5,822億円と比べ4,250億円の減少となっています。年金特別会計については、9,611億円増加の71兆1,965億円となり、東日本大震災復興特別会計は6億円減少の77億円となりました。

厚生労働省「令和6年度予算概算要求の概要」より引用

2.令和6年度厚生労働省予算概算要求における重点要求(ポイント)

 厚生労働省の予算概算要求における重点要求については下記の項目となります。()内の数字は各予算概算要求額です。

(1)今後の人口動態・経済社会の変化を見据えた保健・医療・介護の構築

 ・医療・介護のイノベーションに向けたDXの推進(166億円)

 ・医薬品・医療機器等の実用化促進、安定供給、安全・信頼性の確保(19億円)

 ・イノベーションの基盤構築の推進(734億円)

 ・地域医療構想等の推進(922億円)

 ・地域包括ケアシステムの構築(569億円)

 ・救急・災害医療体制等の充実(123億円)

 ・健康づくり・予防・重症化予防の推進(64億円)

 ・認知症施策の総合的な推進(141億円)

 ・がん対策、循環器病対策等の推進(447億円)

 ・肝炎対策の推進(53億円)

 ・難病・小児慢性特定疾病対策等の推進(1681億円)

 ・歯科保健医療の推進(34億円)

 ・国際機関等を通じた国際貢献の推進・医療の国際展開(123億円)

 ・食の安全・安心の確保(33億円)

 ・次なる感染症に備えた体制強化(139億円)

 ・被用者保険への財政支援(837億円)

(2)構造的人材不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進

 ・最低賃金・賃金の引上げに向けた中小・小規模企業等支援、非正規雇用労働者の正規化促進、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(677億円)

 ・リ・スキニングによる能力向上支援(1468億円)

 ・個々の企業の実態に応じた職務給の導入(0.6億円)

 ・成長分野等への労働移動の円滑化、人材確保の支援(619億円)

 ・フリーランスの就業環境の整備(6.2億円)

 ・「多様な正社員」制度の普及促進、ワーク・ライフ・バランスの促進(147億円)

 ・ハラスメント防止対策、働く方の相談支援の充実、働く環境改善等支援(144億円)

 ・仕事と育児・介護の両立支援(200億円)

 ・多様な人材の就労・社会参加の促進(955億円)

 ・就職氷河期世代、多様な課題を抱える若年者・新規学卒者の支援(801億円)

 ・女性の活躍促進に向けた施策(2181億円)

(3)包社会の実現

 ・重層的支援体制の整備の促進(360億円)

 ・生活困窮者自立支援等の推進(719億円)

 ・障害者支援の促進、依存症対策の推進(1兆5917億円)

 ・成年後見制度の利用促進、権利擁護支援の推進(13億円)

 ・困難な問題を抱える女性への支援(53億円)

 ・自殺総合対策の推進、ひきこもり支援の推進(155億円)

 ・現地調査・遺骨収集の計画的実施、戦没者遺骨の鑑定等に関する体制整備等(36億円)

 ・持続可能で安心できる年金制度の運営(13兆979億円)

 ・被災者・被災施設の支援、雇用の確保、原子力災害からの復興への支援等(101億円)

厚生労働省「令和6年度厚生労働省予算概算要求における重点要求」より引用

3.医療機関における関連施策・事業の抜粋

(1)診療報酬改定DX(施設基準の届出の電子化推進) 新規・推進枠 令和6年度概算要求額 5.1億円

 ①事業の目的 

  診療報酬DXにおける共通算定モジュールの導入や共通算定マスタの整備といった電子システムの運用にあわせて、現在は主に紙(窓口提出・郵送)により行われている保険医療機関等による施設基準等の届出の電子化を推進することにより、保険医療機関等の作業の軽減及び効率化を図ることとしています。

厚生労働省「令和6年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」より引用

(2)医療機関におけるサイバーセキュリティー確保事業 新規・推進枠 令和6年度概算要求額 3.5億円

 ①事業の目的

  ・医療機関等におけるサイバーセキュリティの更なる確保のため、外部ネットワークとの接続の安全性の検証・検査や、オフライン・バックアップ体制の整備を支援することしています。

厚生労働省「令和6年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」より引用

(3)医療機能情報提供制度に係るシステムの運用・保守・改修経費及びかかりつけ医機能報告制度の導入に向けたシステム改修に係る準備経費 新規・推進枠 令和6年度概算要求額 8.4億円

①事業の目的

 ・平成19年より開始した医療機能情報提供制度について、令和5年度中に現行の都道府県単位のシステム運用から、全国統一的な検索サイト(全国統一システム)に移行を行う予定です。令和6年度事業では、報告項目の改正に伴うシステム改修、工程管理等を行うこととしています。

 厚生労働省「令和6年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」より引用

(4)業務改善助成金 拡充・推進枠 令和6年度概算要求額 13億円

 ①事業の目的

  最低賃金の引上げに向けた環境整備を図るため、事業内最低賃金(事業場で最も低い時間給)の引上げを図る中 小企業・小規模事業者の生産性向上に向けた取組を支援することとしています。

厚生労働省「令和6年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)