【No378】医療機関等における印紙税の取扱いについて
医療機関等が発行する受取書(領収書)における印紙税については、特例的な取り扱いがあります。今回の医業経営FP Newsでは、個人事業主・医療法人・一般社団法人等の組織形態に応じた取扱いについて解説します。
1.印紙税とは
印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などに課税される税金で、「印紙税額一覧表」に掲げられている20種類の文書が課税の対象となります。
課税される文書に係る納付すべき印紙税の額は、「印紙税額一覧表」に記載のとおり、その内容にかかわらず定額であるものや、契約書の内容や契約金額、受取金額などによって異なるものもあります。
国税庁「印紙税の手引」P.1参照
2.原則的な取り扱い
一般の企業が発行する領収書・レシートなどは、「印紙税額一覧表」の第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に該当します。売上代金の受取書については、受取金額が5万円未満の場合、非課税です。
(1)内容
受取書に記載される金銭が売上代金に該当するか否かで税額が異なります。売上代金とは、資産の譲渡や使用、役務提供の対価等を指します。
(2)金額
具体的な金額については、下記の表をご参照ください。
注1 受取金額が1,000万円を超える売上代金の受取書の税額は、上記印紙税額一覧表にてご確認ください。
国税庁「金銭又は有価証券の受取書、領収書」より画像引用・参照
3.医療機関等の取扱い
医療機関等が発行する受取書については、第17号文書に該当しても「営業に関しない受取書」として非課税とされる場合があります。ただし、組織形態によって取り扱いが異なります。
(1)個人事業主(医師等)の場合
個人の医師等の行為は一般に営業に当たらないとされ、個人の医師等が発行する受取書は「営業に関しない受取書」として非課税となります。
国税庁「営業に関しない受取書」より参照
(2)医療法人の場合
医療法人については、医療法(昭和23年法律第205号)第39条に基づく医療法人は、公益を目的として設立され、利益金又は剰余金の分配をすることができません。そのため、医療法に基づく医療法人が発行する受取書は、営業に関しないものとして非課税となります。一方、営利法人が経営する病院等が作成する受取書は非課税にはなりません。
国税庁「法人組織の病院等が作成する受取書」より参照
(3)一般社団法人の場合
法令や定款で利益・剰余金の分配が禁止されている場合には、その一般社団法の行為は営業に当たらないものとされ、その一般社団法人が発行する受取書は非課税となります。
国税庁「営業に関しない受取書」より参照
(4)調剤薬局の場合
個人開業の調剤薬局が発行する受取書は非課税となります。対して、法人(株式会社など)による経営の場合は営利法人として扱われ、その法人が発行する受取書は課税対象となります。
(参考)非課税対象の医療関係者
医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師などとなっており、薬剤師も含まれます。
国税庁「印紙税法基本通達」17号文書25より引用
4.さいごに
ここまで見てきた医療機関等における印紙税の非課税の取扱いは、保険診療だけでなく、美容医療や人間ドックといった自由診療(自費診療)の場合も同様に適用されます。
もし、非課税であるにもかかわらず誤って収入印紙を貼付してしまった場合でも、所定の手続きをすれば印紙税の還付を受けられます。詳しくは所轄の税務署にご確認ください。
国税庁「誤って納付した印紙税の還付」より参照
(文責:税理士法人FP総合研究所)