【No385】美術品等についての減価償却資産の判定

医療機関の受付や待合室には、装飾として絵画などの美術品等が飾られていることがあります。さて、これら装飾用の美術品等は、経費として減価償却の対象となるのでしょうか。税務上、美術品等が減価償却資産と認められるか否かは、取得価額などを基にした明確な要件があります。今回の医業経営FPNewsでは、その具体的な要件や美術品等の償却方法についてご案内します。

1.減価償却資産となる美術品等の要件

(1)減価償却資産の概要

事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。

国税庁「減価償却のあらまし」引用

(2)取得価額に基づく判断基準

美術品等(絵画や彫刻等の美術品のほか工芸品などが該当します。以下、「美術品等」といいます。)が減価償却資産に該当するかどうかは、まずその美術品等の取得価額によって判断することとなります。

①取得価額が1点100万円未満の場合

原則として減価償却資産に該当します。なお、取得価額には額縁などの付属品や据付費、そのほか引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等その資産の購入のために要した費用も含まれます。

※平成26年において、「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)等が発遣され、取扱通達(法基通7-1-1等)の改正が行われました。改正前の通達の取扱いでは、以下の要件に該当するかどうかにより、美術品等が減価償却資産に該当するかどうかを判定していました。

・美術関係の年鑑等に登載されている作者の作品かどうか

・取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)未満であるかどうか

国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」Q1参照

国税庁「1 第1 法人税基本通達関係」参照

②取得価額が1点100万円以上の場合

原則として非減価償却資産に該当します。しかし、時の経過により価値が減少することが明らかである場合は減価償却資産として扱われます。ここでいう、「時の経過により価値が減少することが明らか」であることを示すための具体的な要件としては、例えば、以下の事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。

・会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。

・移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。

・他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」Q2参照

2. 美術品等の減価償却

(1)法定耐用年数

減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて判定することとなります。例えば、「器具及び備品」の室内装飾品に該当する美術品等の場合には、法定耐用年数は以下のとおりです。

①室内装飾品のうち主として金属製のもの15年

②室内装飾品のうちその他のもの8年

国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」Q7参照

国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」P.1参照

(2)取得価額などに応じた取り扱い

①使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものの場合

業務の用に供した事業年度に全額を経費として計上できます。

②取得価額が1点10万円以上20万円未満の場合

一括償却資産として減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を、その業務の用に供した年以後3年間の各年分において経費として計上することができます。また、青色申告書を提出している一定の要件を満たした中小企業者等の場合は、少額減価償却資産として取得した年度に経費に計上することができます。

③取得価額が1点20万円以上30万円未満の場合

青色申告書を提出している一定の要件を満たした中小企業者等の場合は、少額減価償却資産として業務の用に供した事業年度に経費に計上することができます。

④取得価額が1点30万円以上100万円未満の場合

取得した美術品等の法定耐用年数に応じて、減価償却していくこととなります。

※現在、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限は、令和8年3月31日までに取得したものが対象となっております。

国税庁「減価償却のあらまし」参照

国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」参照

3. さいごに

今回の医業経営FPNewsでは、医療機関に飾る美術品等の税務上の取り扱いについてご案内しました。重要な点は減価償却資産と認められるための要件のひとつである、取得価額が1点100万円未満ということです。また、取得価額が100万円以上であっても、価値の減少が明らかな場合は減価償却資産となり得ますが、その要件は厳格に定められています。

医療機関の資産管理を適切に行うためにも、これらのルールをぜひご確認ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)