【No408】令和8年度業務改善助成金の申請受付が9月1日より開始します

近年の物価高騰が医療機関の経営を圧迫する中、地域別最低賃金の引き上げによるさらなる賃上げへの対応が急務となっています。優秀な看護師や医療事務を確保するためには不可避な施策ですが、そのための原資をいかに確保するかが重要な経営課題となっています。

こうした経営環境の中、中小企業等の賃上げを支援する国の施策として「業務改善助成金」があります。これは、業務効率化のための設備投資と賃上げを併せて実施する事業者を支援する制度であり、医療機関も対象となります。

今回の医業経営FPNewsでは、令和8年度分の「業務改善助成金」について、今回の拡充内容や賃金要件、実務上の留意点について解説します。

1.申請コース及び助成率区分の改正内容

令和8年度の業務改善助成金は、助成額の見直しによる「底上げ」と、申請手続きの「厳格化」の両面で大幅な変更が行われています。

(1)助成率・申請コースの再編

これまでの少額の引上げコース(30円・45円・60円)が廃止され、「50円・70円・90円」の3コースに再編されました。今回の改正により申請には最低でも50円以上の賃上げが必要です。

また、設備投資費用に対してより高い助成率(4/5)が適用される基準が、「事業場内最低賃金1,000円未満」から「1,050円未満」に引き上げられました。これにより、時給1,000円〜1,049円のスタッフを抱える医療機関にとって、より有利な条件で助成金を受給できるようになっています。

※事業場内最低賃金が、改定後の地域別最低賃金と同額以上となっている場合、本助成金の目的である「低い賃金の底上げ」という要件に該当しなくなるため、助成金の対象とはなりません。

(2)「差額50円以内」制限撤廃の継続

令和7年度から適用されている要件の緩和が、今年も引き続き適用されます。

これまでは、「事業所内で一番低い賃金」と「地域別の最低賃金」の差が50円以内でなければ対象になりませんでした。しかし、令和7年度からこの制限が撤廃されており、「現在の事業所内の最低賃金が、新しく改定される令和8年度の地域別最低賃金を下回っている」のであれば、助成金の申請対象となります。

事業所内の最低賃金
(x円)
従来の制度 拡充後の制度 判定のポイント
x円+50円以下 対象 対象 従来通り、申請対象
x円+51円~x+62円 対象外 対象 令和7年度の拡充により対象
x円+63円以上 対象外 対象外 改定後の地域別最低賃金と同額以上となるため対象外

※上記の表は、地域別最低賃金が「63円」引き上げられた場合を仮定した例です。実際の引き上げ額は都道府県により異なるため、必ず所在地の改定額をご確認ください。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」1.2頁参照

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」2頁参照

2.申請手続き及び対象労働者の改正内容

助成率区分でメリットがある一方で、手続きや対象者の要件は厳しくなっています。以下の点に特にご注意ください。

(1)事後申請(事前提出の省略)の廃止

前年度は特例として、賃上げ後の事後申請が認められていましたが、令和8年度の改正によりこの特例が完全に廃止されました。必ず、労働局へ「交付申請」を行い、「交付決定」の通知を受けてから、設備の発注・契約および賃上げを実施しなければなりません。交付決定前に実施したものは、一切助成の対象外となります。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」4頁参照

(2)申請期限

申請受付は令和8年9月1日に開始されますが、期限は「事業所に適用される地域別最低賃金発効日の前日(または11月30日のいずれか早い日)」となります。多くの都道府県で10月上旬に新しい最低賃金が発効するため、実質的な申請期間は1ヶ月未満となります。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」1頁参照

(3)対象労働者の変更(6か月要件)

引き上げ対象としてカウントできるスタッフが、「雇入れから6か月を経過した、雇用保険被保険者」に限定されました。入社して間もないスタッフや、週20時間未満で雇用保険に未加入のパート・アルバイト等の賃上げは、助成対象の人数に含まれません。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」3頁参照

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」1頁参照

(4)一般の自動車は助成対象外になりました。

これまで特例で対象経費として認められていた「一般車両(乗用自動車や貨物自動車など)」が助成対象外となりました。

※「特殊用途自動車(8ナンバー等の福祉車両)」は引き続き助成対象となります。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」3頁参照

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」4頁参照

厚生労働省 「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領」14頁参照

3.申請手続き

(1)交付申請書や事業実施計画などを、事業場所在地を管轄する都道府県労働局に提出し、審査・交付決定を受けます。

(2)交付決定後、提出した計画に沿って設備投資等の事業を実施し、その結果を労働局に報告して審査を受けることで助成金が支給されます。

(3)同一事業所の申請は年度内1回までに限定されます。

厚生労働省 「令和8年度業務改善助成金のご案内」図引用

4.さいごに

今回の制度拡充により、これまで要件を満たさず対象外だった医療機関においても活用できる可能性が広がりました。一方で、今年度から事前申請が完全義務化(事後申請の廃止)されており、必ず交付決定を待ってから設備投資等を実施しなければならないなど、ルールが厳格化されています。

そのため、制度を活用する場合には、所在する都道府県の最低賃金改定日を早期に把握し、要件を満たすかの確認と投資設備の準備を進められることをお勧めします。

(文責:税理士法人FP総合研究所)