【No409】カスタマーハラスメント対策の義務化について
令和7年6月11日に労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)が公布されました。
本改正により、令和8年10月1日より、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります。
医療機関においても、患者等からのカスタマーハラスメントへの対応が求められるなど、医業経営において重要な改正となります。そのため今回の医業経営FPNewsでは、改正内容のうち、主にカスタマーハラスメント対策の義務化について具体的にご案内いたします。
1.カスタマーハラスメント対策の義務化
職場における「カスタマーハラスメント」とは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものと定義されています。
※電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれます。
※顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。また、障害者から不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。
①顧客等とは
顧客、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある者も含む)を指します。医療機関においては、患者やその家族、施設の近隣に住む住人などが該当するものと考えられます。
②社会通念上許容される範囲を超えた言動とは
社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものを指し、典型的な例としては以下のものがあります。
【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
・そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
・契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
・対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
・不当な損害賠償要求
【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
・身体的な攻撃(暴行、傷害等)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
・威圧的な言動
・継続的、執拗な言動
・拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
医療機関においては、患者からの診療内容に対する不当な損害賠償要求や、患者から従業員等への威圧的な言動などが該当するものと考えられます。
③労働者の就業環境が害されるとは
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、 能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
厚生労働省「リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」参照
2.カスタマーハラスメントの防止のために講ずべき措置
事業主は、下表のとおりの措置を講じることが本改正で義務化されました。ただし、対策を講じる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法における、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。
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◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 |
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①カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する ②カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた対処の内容(※)を、労働者に周知する (※)管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐ、可能な限り労働者を一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、本社・本部等へ情報共有を行い指示を仰ぐ 等 |
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◆相談体制の整備 |
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③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する ④相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする |
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◆事後の迅速かつ適切な対応 |
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➄事実関係を迅速かつ正確に確認する ⑥被害者に対する配慮のための措置を適正に行う ⑦再発防止に向けた措置を講ずる |
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◆対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置 |
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⑧特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する |
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◆そのほか併せて講ずべき措置 |
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⑨相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する ⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する |
※赤字は他のハラスメントで講じるべき措置と異なる項目です。
厚生労働省「リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」参照
3.事業主・労働者の責務
事業主、労働者は以下の事項に努めることが求められます。
【事業主の責務】
・カスタマーハラスメントを行ってはならないことその他カスタマーハラスメントに起因する問題(以下、「カスタマーハラスメント問題」という)に対する労働者の関心と理解を深めること
・労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をすること
・事業主自身がカスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
【労働者の責務】
・カスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
・事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること
厚生労働省「リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」参照
4.その他のハラスメント
今回の法改正とは別に、事業主として引き続き留意すべきハラスメント対策があります。以下の指針に基づき、適切な職場環境の維持に努めてください。
・職場における妊娠・出産等に関するハラスメント
「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号)
・職場における育児休業等に関するハラスメント
「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号)
医療機関では、出産や育児、介護に伴う休職や時短勤務を選択するスタッフの方も多くいらっしゃいます。カスタマーハラスメント対策と併せて、これらへの取り組みも引き続き徹底していただくようお願いいたします。
(文責:税理士法人FP総合研究所)