【No1026】相続時精算課税制度で相続時精算課税適用者が先に死亡した場合の取扱いについて

令和5年度税制改正により令和6年分から相続時精算課税制度にも新たな基礎控除(110万円)が設けられたことから相続時精算課税制度を適用した申告人員は大幅に増加しました。今回は、相続時精算課税制度で受贈者が先に死亡した場合の取扱いについてご紹介します。

1.相続時精算課税制度の概要                                             

相続時精算課税制度とは、原則として贈与をした年の1月1日において、60歳以上の父母または祖父母から、同日において18歳(令和4年3月31日以前の贈与については20歳)以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に一定の書類を添付した「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

贈与税の計算は、その選択した年分以後、その年の1月1日から12月31日まで間に、相続時精算課税を適用して贈与をした者(以下、「特定贈与者」といいます。)から贈与を受けた財産の合計額から、特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて計算します。特別控除額は期限内申告書に控除を受ける金額その他必要な事項の記載がある場合に限り適用が可能となります。

この制度の最大の特徴は、贈与税と相続税を一体として考えるところにあり、特定贈与者から相続時精算課税に係る贈与により財産を取得した者(以下、「相続時精算課税適用者」といいます。)については、その特定贈与者の相続時に、相続時精算課税を適用した贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算し、その贈与財産につき課された贈与税額を相続税額から控除します。また、控除しても控除しきれなかった金額がある場合においては、その控除しきれなかった金額に相当する税額が還付されます。

なお、相続時精算課税を選択すると、その特定贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。

2.納税義務の承継及び承継割合                                                       

特定贈与者が死亡する以前に相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人が納税に係る権利義務を承継します。

この場合、権利義務の承継する割合は特定贈与者がいない場合の各相続人の各相続分(特定贈与者がいないものとして計算した場合の相続分)になります。

3.相続時精算課税適用者が「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合                                                 

上記1で記載したとおり、相続時精算課税制度の適用を受ける場合には「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。相続時精算課税適用者が「相続時精算課税選択届出書」を提出する前に死亡したときは、相続時精算課税適用者の相続人が権利義務を承継するため相続時精算課税適用者にかわって「相続時精算課税選択届出書」をすることができます。

この場合の届出書の提出期限は、その相続開始を知った日の翌日から10月以内となり、提出先は贈与税の納税地の所轄税務署長に提出することになります。

また、相続人が2人以上いる場合には、「相続時精算課税選択届出書」を連名で提出するため相続人のうち1人でも欠けた場合には相続時精算課税の適用を受けることができません。

(文責:税理士法人FP総合研究所)