【No1050】不在者財産管理人について
相続があった場合において被相続人の遺言書がないときには、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。しかし、相続人のうちに長期間にわたって消息不明で失踪宣告していない人がいる場合には、遺産分割協議を行うことができません。こうした場合には、不在者財産管理人の選任の申し立てを行い、不在者の代わりに不在者財産管理人が遺産分割協議に加わり、遺産分割を進めることになります。今回は不在者財産管理人について説明します。
(1)不在者財産管理人の選任の申し立て
所在のわからない相続人がいることにより遺産分割協議ができない等の事態を避けるために、こうした相続人がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申し立てを行うことができます。この申し立てにより選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却等を行うことができます。
(2)不在者財産管理人について
不在者財産管理人に選任されるための資格は必要ありませんが、不在者の財産を管理するために選ばれるものであることから、職務を適切に行えることが必要とされます。そのため、不在者との関係や他の相続人等との利害関係の有無などを考慮して適格性が判断され、場合によっては弁護士、司法書士などの専門職が選ばれることもあります。
不在者財産管理人は、選任後に不在者の財産を調査して、財産目録や管理報告書を作成し、家庭裁判所に提出します。また、その後も家庭裁判所から求められた場合には、定期的に不在者の財産状況の報告を行います。
不在者財産管理人から請求があった場合には、家庭裁判所の判断により、不在者の財産から不在者財産管理人への報酬が支払われることになります。また、不在者財産管理人が本人の財産を不正に費消した場合などには、不在者財産管理人を改任されるほか、損害賠償請求を受けるなど民事上の責任を問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を問われることもあります。
なお、不在者財産管理人の有する権限は主に財産の保存に関する権限であることから、不在者に代わって遺産分割協議をする場合や不在者の財産を処分する必要がある場合には、別途「権限外行為許可」という手続きを行い、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
(3)不在者財産管理人の職務の終了
不在者が現れたとき、不在者について失踪宣告がされたとき、不在者が死亡したことが確認されたとき、不在者の財産がなくなったとき等まで、不在者財産管理人の職務は続きます。申立てのきっかけとなった当初の目的(遺産分割など)を果たした後も、上記事由が生じるまでは職務は継続されます。
不在者が現れたときには不在者であった者に、不在者について失踪宣告がされたり不在者が死亡したときは不在者の相続人にそれぞれ財産を引き継ぐことになります。
(4)相続税申告が必要な場合の注意点
上記のとおり、行方不明の相続人がいる場合には不在者財産管理人を選任して遺産分割協議に参加してもらう必要がありますが、不在者財産管理人の申し立てから選定、遺産分割協議確定までには時間がかかる可能性が高いということに留意する必要があります。
申し立てにあたっては申立書類の作成、所在不明となった事実を裏付ける資料の準備が必要となり、選定にあたっては家庭裁判所が申立人から事情を聞いたり、不在者の親族に照会を行うなど「不在」であることに関する審理を行います。直近にあった事例では、上記のほか運転免許・出入国・失業保険等の記録の確認が行われたため、申し立てから選定までに半年ほどかかりました。さらに、前述のとおり、遺産分割協議を行うには別途家庭裁判所の許可が必要となりますので、選定後も遺産分割協議確定までには時間を要することになります。
相続税の申告・納付期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内ですが、相続が開始した後に手続きを行った場合には期限までに間に合わない可能性が考えられます。そのため、こうした手続きが必要となるケースでは、事前に不在者財産管理人を選任しておくことを検討する必要があります。
また、行方不明の相続人について今後もその所在が判明する見込みがないと考えられる場合には、①失踪宣告を行う、②遺言書を作成して行方不明の相続人に財産を相続させないようにするといった方法を検討するのが良いと考えられます。
ただし、①については不在者の生死が不明になってから7年間が満了したときに死亡したものとみなされること、②については、仮に遺言者の相続開始後に所在が判明した場合には、遺留分侵害額請求がなされる可能性があることに留意する必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)