【No723】相続税の調査の状況(平成30事務年度)について

 国税庁より平成30事務年度(平成30年7月~令和元年6月)に実施した相続税の実地調査の状況が公表されましたので、ご紹介いたします。

1. 相続税の調査事績

【課税価格階級別の被相続人】

相続税の税務調査ですが、調査を受けた場合85.7%が修正申告となっていることが分かります。

また、課税価格階級別で上から数えると2億円超が調査を受けることとなる可能性が高いといえます。

2.調査事績に係る申告漏れ財産の内訳

 相続税調査事績によれば、申告漏れ財産のうち、現預金及び有価証券が占める割合は47.7%となっています。このことから、相続税の税務調査は金融資産が中心であることが分かります。特に、家族名義の預貯金や株式(名義預金等)を被相続人の財産として課税されるケースが多いものと思われます。

3.海外資産関連事案に係る調査事績

 上記の他にも、国税庁は海外資産関連事案等についても調査事績を公表しています。海外資産関連事案とは、次のいずれかに該当する事案をいいます。

1 相続又は遺贈により取得した財産のうちに海外資産が存するもの 2 相続人、受遺者または被相続人が日本国外に居住する者であるもの
3 海外資産等に関する資料情報があるもの  4 外資系金融機関との取引のあるもの等

 税務署は納税者の資産運用の国際化に対応し、相続税の適正な課税を実現するため、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、平成30年9月に初回交換が行われたCRS情報制度(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、海外資産の把握を積極的に行っており、平成30事務年度の実地調査状況は、実地調査件数1,202件、非違件数144件、重加算税賦課件数8件、申告漏れ課税価格は59億円(そのうち、重加算税賦課対象は1億円)となります。

 CRS情報制度は日本と同時に開始した国(シンガポール、スイスや香港・マカオ他)など、富裕層にとってなじみ深い国々も多数あり、2019年現在、100以上の国・地域がCRSに参加しています。

4.まとめ

 上記でも記載したとおり、相続税の調査で発覚する申告漏れ相続財産で一番多いのが、預貯金や株式等の金融資産です。海外資産の調査でも同様に申告漏れ財産は、金融資産が大部分を占めています。被相続人の金融資産を親族が全て把握することは困難であること又名義預金等を相続財産として申告すべきものか判断が難しいことが要因と思われます。

(担当:森 楓)