【No724】国外財産調書制度等の見直しについて

 令和2年度税制改正においては、国外財産調書制度等についての見直しが行われることとなりました。年末近くに相続があった場合、被相続人の国外財産を適切に把握することが難しいことから、記載内容については柔軟な対応がとられることとなりました。また、相続税については、国外財産調書を提出していなかったとしても加算税の加重はなされませんでしたが、相続税に関して修正申告等があった場合には、原則的には、加算税の加重措置の適用対象になる(相続人が把握していない相続国外財産が見つかった場合などは適用対象外)こととなり、加算税の軽減・加重措置の特例の適用判定の基礎となる国外財産調書が見直されることとなりました。さらに、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提示がない場合の加算税の軽減・加重措置の特例が新しく創設されました。

 国外財産調書の提出件数は、年々増加傾向(Vol. 698参照)を示しており注目を集めておりますので、国外財産調書制度等について見直された内容についてご説明します。

1.相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化

 相続開始年の12月31日においてその有する国外財産に係る国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産を記載しないで提出することができることとなりました。この場合において、国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額からその相続国外財産の価額の合計額を除外して判定することとなり、令和2年分以後の国外財産調書について適用されます。

2.国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し

① 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合が加えられました。

② 次のいずれかに該当する場合には、加算税の加重措置は適用しないこととなりました。

イ その年の12月31日において相続国外財産を有する者(その価額の合計額が提出基準額(5,000万円)を上回る国外財産(相続国外財産を除く。)を有する者を除く。)の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合

口 その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく国外財産調書に記載すべき相続国外財産についての記載がない場合(記載不備の場合を含む。)

 当該加重措置の見直しは、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

3.過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し

 相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書について、次に掲げる措置の区分に応じそれぞれ次に定める国外財産調書とされ、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

① 国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置

次に掲げる国外財産調書のいずれか

イ 被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書

口 相続人の相続開始年の年分の国外財産調書

ハ 相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書

② 加算税の加重措置

上記①イからハまでに掲げる国外財産調書の全て

(注1)国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置で修正申告等があった場合の加算税の加重措置は、上記①ハに掲げる国外財産調書の提出義務がない相続人については適用されません。

(注2)相続開始年において国外財産調書に記載しないことができる相続国外財産に係る所得税に関し修正申告等があった場合の加算税の加重措置は、相続開始年の年分については適用されません。

4.国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提示がない場合の加算税の軽減措置及び加重措置の特例の創設

 国外財産を有する者が、国税庁等の当該職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類のうち、その者が通常保存し、又は取得することができると認められるものの提示又は提出を求められた場合において、その提示又は提出を求められた日から60日を超えない範囲内においてその提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出をしなかったとき(その者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)における加算税の軽減措置及び加重措置の適用については、次のとおりとなりました。

① その国外財産に係る加算税の軽減措置は適用されません。

② その国外財産に係る加算税の加重措置については、その加算する割合は10%(適用前加算割合:5%)となります。

(注)上記②については、上記「2. 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し」における②イ又は口に該当する場合には、その加算する割合は5%(適用前加算割合:なし)となります。

 当該特例は、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 (担当:長部 光宏)