【No764】生命保険契約を活用した相続対策

 生命保険契約は、状況により、相続対策に有効な場合があります。

 具体的には、生命保険金として受け取ることで、相続税の計算上有利になる、特定の人に確実に財産を渡せる、などです。

 今回のFP Newsでは、相続が発生した場合の生命保険金の有効性について解説します。

【1】相続が発生した場合における生命保険金の課税関係

 相続によって取得した生命保険金で、被相続人が保険料を負担した契約にかかるものは、相続税の課税対象となります。

 相続人がこのような生命保険金を受け取る場合には、「500万円×法定相続人の数」までの保険金は、相続税は非課税となります。

【2】生命保険契約による保険金の相続対策における有効性

①受取人指定

 生命保険金は、本来の相続財産ではなく、みなし相続財産として取り扱われるため、遺産分割協議の対象になりません。

 そのため、相続人以外の人にも確実に現金を渡したい、という場合に有効です。

 しかしながら、孫を受取人にすると生命保険金の非課税枠が適用できず、相続税の2割加算の対象にもなります。さらに、被相続人の生前に孫へ贈与を行っていた場合には、生前贈与加算の対象にもなってしまうため、注意が必要です。

 遺産分割協議が成立していなくとも、保険金受取人単独で保険会社に請求することができるため、受け取った瞬間から、受取人の一存で使うことができます。

 また、生命保険金は、遺留分金額の算定における特別受益の対象となりません。より多くの財産を渡したい相続人がいる場合は、その人を保険金受取人として契約しておくと良いということです。

 ただし、保険金受取人である相続人と、その他の相続人との間に著しい不公平がある場合は、遺留分金額の算定に含まれる場合があります。

②相続放棄

 生命保険金は、相続税の課税上、みなし相続財産として取り扱われるだけであり、被相続人の財産ではありません。

 保険金の請求権は、本来は保険金受取人の財産です。したがって、相続放棄をした場合でも、生命保険金を受け取ることができます。この場合は、生命保険金の非課税枠の適用はありません。

 被相続人の生命保険金を受け取りたくない場合は、相続放棄とは別に、保険金請求権の放棄、または受取拒絶の意思表示をしなければなりません。

 保険金受取人が生命保険金の受け取りを放棄等した場合でも、他の相続人が保険金を受け取ることはできません。

【3】生命保険契約の確認方法

 被相続人が加入していた生命保険契約がある場合でも、保険金受取人が請求しなければ、時効で受け取ることができなくなってしまいます。保険金請求の時効は、支払事由発生から3年です。

 被相続人が加入していた生命保険契約は、以下の方法で検索することができます。

①弁護士への依頼

 弁護士は依頼を受けた事件の資料を、弁護士会照会という制度を通じて、確認することができます。

 弁護士に被相続人の財産確認を依頼することで、生命保険契約の調査が可能です。

②保険会社への照会

 各生命保険会社に対して、保険契約者である被相続人が死亡したことが確認できる戸籍等を添付し、所定の情報開示請求書を提出することで、被相続人名義の契約を確認してもらうことができます。

 加入している可能性のある生命保険会社について、1社1社、開示請求を行う必要があるため、非常に手数のかかる作業です。

③通帳の確認

 被相続人名義の通帳を確認することで、生命保険会社への口座振替が見つかる場合があります。

 口座振替であれば、契約している生命保険会社名が記載されている場合があるため、その生命保険会社について、開示請求を行うことで、被相続人が加入していた生命保険契約が確認できます。

 複数の生命保険会社への保険料の口座振替が行われていた場合、その件数と、把握している生命保険契約の数を確認することで、生命保険金の請求漏れを防ぐことができます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)