【No809】非居住者等へ土地等の購入対価及び不動産賃借料を支払った場合の源泉徴収について

 世の中のグローバル化の進展により、日本国内に不動産を所有しながらも日本を離れ海外で活躍されている方や日本の不動産市場に対して魅力を感じ投資を行っている海外個人投資家や機関投資家が増加しているというニュースに触れる機会も多いのではないかと思います。このような状況に伴い、海外在住者等が所有している日本国内にある不動産を購入したり賃借するという機会も増えていると考えられます。

 今回は、海外在住者等から不動産を購入する場合や賃借する場合に必要となる源泉徴収についてご説明します。

1. 「非居住者等」について

 所得税法上、国内に住所を有し、又は、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を「居住者」といい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。なお、住所は個人の生活の本拠をいい、住民票の住所地が日本であることは,“生活の本拠”が日本であることを裏付ける要素の一つとなるものの“生活の本拠”かどうかは、客観的事実によってその人の生活の中心がどこであるかをもって判定されます。

 なお、法人については、本店又は主たる事務所の所在地により「内国法人」又は「外国法人」の判定が行われ、その判定に当たっては、登記や定款等の定めなどによります。(以下、「非居住者」や「外国法人」を「非居住者等」といいます。)

2. 非居住者等から土地等を購入した場合

 非居住者等から日本国内にある土地等を購入し、その譲渡対価を国内で支払う者は、非居住者等に対して対価を支払う際に10.21の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

 なお、源泉徴収義務者には「土地等の譲渡対価の支払をする者」の全てが含まれていることから、法人はもちろん個人(事業者かどうかは問われません。)であっても、非居住者等に対して土地等の譲渡対価を支払った場合には、原則として源泉徴収をする必要があります。ただし、個人が自己又はその親族の居住の用に供するために土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合には、その個人は源泉徴収をする必要はありません。

3. 非居住者等に不動産の賃借料を支払った場合

 非居住者等から日本国内にある不動産を借り受け、日本国内で賃借料を支払う者は、その支払の際に20.42%の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

 なお、土地等を購入した場合と同様に、法人はもちろん個人(事業者かどうかは問われません。)であっても、非居住者等に対して不動産の賃借料を支払った場合には、原則として源泉徴収をする必要があります。ただし、不動産の賃借料のうち、土地、家屋等を自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものは、源泉徴収をする必要はありません。

4. 源泉徴収した所得税等の納付について

 非居住者等に対して、国内において支払った土地等の譲渡の対価及び不動産の賃借料から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。

 また、非居住者等に対して土地等の譲渡の対価及び不動産の賃借料を“国外”で支払う場合であっても、支払者が国内に住所若しくは居所又は事務所等を有するときは、国内源泉所得を国内において支払うものとみなして、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を納めなければなりません。この場合の納付期限は、支払った月の翌月末日となります。

5. 非居住者の確定申告について

 所得税及び復興特別所得税が源泉徴収された「非居住者」においては、日本国内にある資産の譲渡により生じる所得や日本国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価が一定額以上ある場合には、確定申告をすることとなります。このような場合には、非居住者の納税義務を果たすために「納税管理人」を定め、確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等を代わりに行ってもらうことになります。なお、「納税管理人」を定めたときには、非居住者の納税地を所轄する税務署長に、納税管理人を定めたとき又は出国の日までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。

6. まとめ

 非居住者等からの土地等の購入や不動産を賃借した場合には、前述のとおり法人のみならず個人でも源泉徴収義務者となる場合があります。源泉徴収漏れの場合には不納付加算税が課される恐れがあり、特に土地等を購入した場合には高額となることも考えられますので、売主や貸主が「非居住者等」に該当するかの判断には注意が必要です。過去には売主の住所地が日本であり、「居住者」である旨を口頭で確認していたとしても、日本での滞在期間の長さ、振込先の口座の所在地、送金依頼書に記載の住所地などの事実認定により「非居住者」と判断された事例もあり、仮に源泉徴収漏れがあった場合でも『正当な理由があると認められる場合』には不納付加算税が免除される余地もありますので(国税通則法第67条1項但し書き)、売主や貸主が「非居住者等」に該当するか否かについて確認・検討しておくことが重要と考えられます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)