【No843】NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係について

 国税庁よりNFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係について発表がありました。近年ニュース等でも取り上げられることが多いNFTについて、課税上の取り扱いについてご説明します。

(1)NFT・FTとは

 NFT(Non Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で発行される代替することができないトークンのことをいいます。本来、デジタル資産については、改ざんや複製することが容易にできてしまったために、その価値や所有者を明確にすることが困難でした。しかしNFTの技術を利用することで、デジタルアートやゲーム、音楽といったデジタル資産の所有者を明確に証明することができるようになりました。その結果として、デジタル資産の価値を担保することができるようになり、取引も可能となります。

 一方でFTは(Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で発行される代替することができるトークンのこといいます。NFTとは逆に、仮想通貨等がそれにあたることになります。

(2)役務の提供などによりNFTやFTを取得した場合の課税上の取り扱い

 国税庁によれば、いわゆるNFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)が、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、そのNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となりますが、財産的価値を有する資産と交換できないNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となりません。

 所得税の課税対象となる場合の所得は、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得のいずれかに区分されることになります。そのため、役務の提供などによりNFTやFTを取得した場合には、その役務提供の対価が、どのような内容に該当するのか確認する必要があります。

【所得税の課税対象となる場合の所得区分】

(3)NFTやFTを譲渡した場合の課税上の取り扱い

 国税庁によれば、譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。

 ただし、㋑NFTやFTの譲渡が、営利を目的に継続的に行われている場合には、雑所得または事業所得に区分し、譲渡所得としない、㋺NFTやFTの譲渡が、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分することとされています。

【NFTやFTを譲渡した場合の所得区分】

(4)今後の動向

 最近では自民党がNFTに関する提言(案)をとりまとめました。現在Web3.0というインターネットや、現在のGAFAM中心のデジタル経済の構造を根底から覆す新たな技術革新の波が押し寄せているとした上で、日本のアニメやゲームといったサブカルチャーはNFTのビジネスにおいても起爆剤になるとの認識のもと、早急に社会基盤やルールを整備するべきであると提言されており、法整備や税負担の軽減について検討がされているようです。物理的に存在しないデジタルアートがNFTにより数億円で取引がされるなど、今後新たな市場が急激に拡大していくものと考えられNFTに関する税制の今後の動向について引き続き注視する必要があります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)

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