【No853】成年年齢引下げによる住宅取得等資金の贈与の特例への影響

 令和 4 年 4 月 1 日に改正民法が施行され、成年年齢が現行の 20 歳から 18 歳に引き下げられました。
 今回は、「住宅取得等資金贈与の特例」を取り上げ、その他の税制改正と併せて解説します。

1.住宅取得等資金贈与の特例の概要と民法改正

(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

 その年の 1 月 1 日において 20 歳以上(改正前)である者が自己の居住の用に供する一定の家屋の新築若しくは取得又は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築等のための資金をその直系尊属からの贈与により取得した場合には、一定の金額まで贈与税が非課税とされます。

<改正点>
 令和 4 年 4 月 1 日以後の贈与については、受贈者の年齢要件が贈与年の 1 月 1 日おいて 18 歳以上となります。
 したがって、例えば、令和 4 年 1 月 1 日において 19 歳の者が、令和 4 年 3 月 31 日以前に受けた贈与については、その者は 1 月 1 日においては 20 歳以上の者に該当しないため、住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けることができないことになります。
 令和 4 年 4 月 1 日以後に受けた贈与については、その者はその年の 1 月 1 日においては 18 歳以上の者に該当するため、当該贈与については住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けることができます。

(2)住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例

 その年の 1 月 1 日において 20 歳以上(改正前)である子又は孫が、父母又は祖父母(年齢制限なし)からの資金贈与によって自己の居住の用に供する一定の家屋の取得又は一定の増改築等を行った場合、その住宅取得等資金の贈与について相続時精算課税の適用を選択することができます。

<改正点>
 令和 4 年 4 月 1 日以後の贈与については、受贈者の年齢要件が贈与年の 1 月 1 日おいて 18 歳以上となります。
 したがって、例えば、令和 4 年 1 月 1 日において 19 歳の者が、令和 4 年 3 月 31 日以前に受けた贈与については、その者は 1 月 1 日においては 20 歳以上の者に該当しないため、相続時精算課税の適用を受けることができないこととなり、住宅取得等資金贈与の特例の適用も受けることができないことになります。
 令和 4 年 4 月 1 日以後に受けた贈与については、その者はその年の 1 月 1 日においては 18 歳以上の者に該当するため、当該贈与については相続時精算課税の適用を受けることができ、住宅取得等資金贈与の特例の適用も受けることができます。

2.住宅取得等資金贈与の特例の非課税に係る令和 4 年度税制改正

 令和 4 年度税制改正により、住宅取得等資金贈与の特例は成年年齢引き下げに伴う改正の他、次のとおり改正されています。

(1)適用期限の延長

 住宅取得等資金贈与の特例の適用期限が、令和 5 年 12 月 31 日まで 2 年延長されました。

(2)非課税限度額

 令和 4 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する住宅取得等資金の非課税限度額は、住宅用家屋の取得等に係る契約の締結時期にかかわらず、住宅取得等資金の贈与を受けて新築等をした次に掲げる住宅用家屋の区分に応じ、それぞれ定める金額とされます。

(3)適用対象となる既存住宅用家屋の要件

 令和 4 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する住宅取得等資金贈与の特例の適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件を廃止するとともに、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和 57 年 1 月 1 日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなします。)であることが加えられます。

 

(文責:税理士法人FP総合研究所)