【No885】相続開始時点で売買契約中であった不動産に関する質疑応答事例について

 11月25日に国税庁ホームページが更新され、新たな質疑応答事例19事例(所得税4問、譲渡所得5問、相続税2問、法人税5問、消費税2問、印紙税1問)が追加されました。

 今回は、そのうち相続開始時点で売買契約中であった不動産に関する事例を2つご紹介します。

1.相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る相続税の課税

【照会要旨】

 土地や建物等の不動産の売買契約締結後、当該不動産の引渡し及び代金決済が未了の段階(以下「売買契約中」といいます。)でその売買契約に係る売主又は買主が死亡した場合、その売買契約中の不動産に係る相続税の課税はどのようになりますか。

【回答要旨】

 ①売買契約中に売主に相続が開始した場合

 ⇒相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権(未収入金)となります。

  なお、残代金請求権(未収入金)については財産評価基本通達204に定める貸付金債権の評価により評価します。

 ②売買契約中に買主に相続が開始した場合

 ⇒相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に係る不動産の引渡請求権等が相続財産となりますが、当該売買契約に係る不動産を相続財産として申告しても差し支えありません。

  不動産の引渡請求権等の価額は原則として不動産の取得価額、不動産の価額は財産評価基本通達により評価した価額(土地:路線価方式又は倍率方式により評価した金額、建物:固定資産税評価額×1.0)によることとされています。

  なお、当該被相続人から承継した債務は、いずれの場合でも相続開始時における残代金支払債務となります。

2.相続開始時点で売買契約中であった不動産の譲渡についての相続税額の取得費加算の特例の適用

【照会要旨】

 不動産の売買契約中に売主又は買主が死亡した場合、その売買契約中の不動産に係る譲渡所得の課税について、租税特別措置法第39条に規定する取得費加算の特例(以下「相続税額の取得費加算の特例」といいます。)の適用を受けることはできますか。

【回答要旨】

 ①売買契約中に売主に相続が開始した場合

 ⇒その相続人が譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期を当該不動産の引渡しがあった日として譲渡所得の申告をするときには、適用可能です。この場合の取得費に加算する相続税額は以下の算式により計算します。

・Aについて

 相続人が譲渡した売買契約中の不動産については、相続税の課税上、上記1①の相続開始時における残代金請求権に加え、被相続人が相続開始時までに受領した手付金に相当する額がその課税価格の計算の基礎に算入されていると考えられることから、当該不動産の譲渡収入金額(残代金請求権+手付金に相当する額)となります。

・Cについて

 その相続人の債務控除額に、その相続人の売買契約中の不動産に係る譲渡収入金額から残代金請求権の価額を控除した金額(前受金債務に相当する額)を加算します。

 ②売買契約中に買主に相続が開始し、その相続人が当該契約に係る不動産を転売した場合

 ⇒適用可能です。この場合の取得費に加算する相続税額は以下の算式により計算します。

・Aについて

 相続人が転売した売買契約中の不動産に係る相続税の課税は、上記1②のとおり、当該不動産の引渡請求権又は当該契約に係る不動産とされていることから、Aについては相続税の申告内容に応じて、引渡請求権の価額(原則として取得価額)又は不動産の価額(財産評価基本通達により評価した価額)となります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)