【No333】損金の額に算入することのできる役員報酬① 定期同額給与

 法人が役員に対して支給する給与(いわゆる「役員報酬」)の額については、法人税法に定める「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当しなければ損金の額に算入することはできません。またこれらに該当する給与であっても不相当に高額な部分の金額についても損金の額に算入することはできません。このように役員に対する給与は従業員に対する給与と大きく異なる事となることから、損金算入が否認されないためにも十分に制度を理解しておく必要があります。そこで今後複数回に分けて役員報酬の税務に関して説明することとします。

Ⅰ.定期同額給与

1.基本的な考え方

 役員報酬の損金算入要件として実務で最も利用される「定期同額給与」についてご説明します。定期同額給与とは、その支給時期が1か月以下の期間で支給される給与のうち各支給時期における金額が同額であるものをいいます。つまり毎月の給与支給時期において定額の給与を支給している場合には損金に算入することが可能(不相当に高額である場合を除く)であることとなるため、理由なく金額が増減する場合には当該差額部分については役員賞与として損金不算入となる可能性があることから注意が必要となります。

(注)年に1回又は半年に1回など月単位を超えて支給されるものは、仮に月ごとの一定金額を前提として計算したものであっても定期同額給与には該当しません。

 また継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月概ね一定であるものについても定期同額給与として損金算入の対象となります。例えば毎月役員の住宅家賃を支払ったり、役員個人の契約である保険の保険料を支払うなど継続的に同額の経済的利益の供与を受けている場合などが該当します。ただし住宅入居時の礼金や権利金などの一時金を支払うなど臨時的に支払うものは定期同額給与に該当せず、役員に対する賞与として認識されることから損金不算入の取扱いとなります。

2.定期給与の額につき改訂が認められる場合

定期同額給与は原則として定額支給が前提となりますが、下記の要件のいずれかに該当する場合に限り金額の改訂が認められることとなります。

①その事業年度開始の日から原則として3か月までに行われる定期給与額の改訂

 役員報酬は毎年株主総会を経て決定されることとなります。これら所定の法的な手続により行われた改訂については、その前後の役員報酬額が一定であることを前提に改訂後も損金算入が認められることとなります。

②その事業年度において法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改訂事由」という)によりされた、これらの役員に係る定期給与の額の改訂

③その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これらに類する理由(以下「業績悪化改訂事由」という)によりされた定額給与の額の改訂

 ただし当該改訂は減額改訂のみに限られます。

3.新型コロナウィルスの影響による役員報酬の改訂について

 新型コロナウィルスの感染拡大による業績悪化に伴い役員報酬の改訂につき検討する場合における税務上の取扱いについては、「国税における新型コロナウィルス感染症対策防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に記載があります。

 例えば問6ではイベント会社がコロナウィルス感染防止の観点から開催中止の要請があったことでイベントがキャンセルになり、予定していた収入がなくなり家賃や従業員の給与等の支払が困難な状態となり役員報酬の減額を行った事例が記載されていますが、この場合、法人の経営状況が著しく悪化していることから上記2③に該当することとなるため、経営改善のため役員報酬を減額しても役員報酬の損金算入は認められることとなります。

 このように新型コロナウィルスの影響により経営状態が著しく悪化している場合には、多くの場合において上記「業績悪化改訂事由」に該当することとなると考えられます。ただし業績悪化改訂事由は減額改訂に限定されているため、今後経営改善が見込まれる場合に役員報酬の増額改訂を検討するときは上記①又は上記②のいずれかに該当する必要がありますのでご注意ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)