【No334】納税管理人の選任(海外転勤等により個人が非居住者になる場合)

 日本国内の会社に勤めている給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。非居住者で確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を、その人の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。

1.納税管理人とは

 納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付などを非居住者に代わってする人のことです(納税管理人は法人でも個人でも構いません。)非居住者の確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等をするのが、納税管理人です。

 税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

2.確定申告をしなければならない場合について

① 国内にある資産の運用又は保有により生じる所得(源泉徴収されない取引)

② 国内にある資産の譲渡により生じる所得

③ 国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価(不動産所得)

④ 国内における一時所得に該当する所得

3.年の中途で海外勤務となった年分の申告と納期限について 

① 出国の時までに納税管理人を指定した場合

 その年1月1日から出国する日までの間(以下「居住者期間」といいます。)に生じたすべての所得と、出国した日の翌日からその年12月31日までの間(以下「非居住者期間」といいます。)に生じた国内源泉所得を合計額について、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告及び納税をする必要があります。

② 納税管理人を指定しないで出国する場合

 居住者期間に生じたすべての所得について、出国の日までに確定申告(準確定申告)をする必要があります。そして、この準確定申告をしたとしても、居住者期間に生じたすべての所得と非居住者期間に生じた国内源泉所得との合計額について、納税管理人を通じるなどして、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告及び納税する必要があります。

4.年間を通じて海外に勤務している年分の申告と納期限について

 海外勤務となった年の翌年以後も、日本国内に国内源泉所得があり、その所得の金額が基礎控除額を超える場合には、原則として、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告をする必要があります。

 この場合の所得控除については、雑損控除、寄附金控除及び基礎控除だけが適用できます。ただし、雑損控除については、国内にある資産について生じた損失に限られます。

(国税庁タックスアンサー 参照)

5.令和3年度の税制改正

 納税管理人について定めた国税通則法117条が見直され、以下のとおり納税管理人制度が拡充しました。この改正は、令和4年1月1日以後に適用されます。

(1) 納税管理人を定めるべき納税者が納税管理人の届出をしなかった場合

 税務当局は、その納税者に対し、60日を超えない範囲内で期限を設けて、納税管理人の届出をすべきことを求めることができます。この求めを受けた納税者を「特定納税者」といいます。

(2) 特定納税者が指定期限までに納税管理人の届出をしない場合

 税務当局は親族や子会社等の国内に所在する関連者を「特定納税管理人」として指定できます。

① 特定納税者が個人である場合

イ その特定納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者

ロ その特定納税者の国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実についてその特定納税者との間 の契約により密接な関係を有する者

ハ 電子情報処理組織を使用して行われる取引その他の取引をその特定納税者が継続的に行う場を提供する事業者

② 特定納税者が法人である場合 

イ その特定納税者との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の50%以上を保有する関係その他の特殊の関係のある法人

ロ その特定納税者の役員又はその役員と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者

ハ 上記①ロ又はハに掲げる者  

(注)特定納税者及び特定納税管理人に対しては書面により通知が行なわれ、不服申立て又は訴訟を可能とする処置が講じられます。

改正前は、納税管理人の選任と届出についてのみ定められていましたが、
届出しない納税者には指定日を設けて届出を求めることができるようになりました。
その指定日までに選任・届出をしない場合には、
特定納税管理人(親族や関係法人など)の指定ができることになりました。

6.国税以外の地方税

 個人に課せられる住民税は、毎年その賦課期日(1月1日)現在において、都道府県及び市町村に住所を有する者に対して、前年の所得をもとに課税されます。したがって、年の途中で非居住者となる場合には、住民税の支払いが残っている可能性があります。その場合は1月1日の住所地の市区町村へ「納税管理人申告書」を提出します。

 一括で未納額を支払うことも視野に入れて検討しましょう。

 国内に不動産をお持ちのまま、非居住者になる場合には、毎年の固定資産税の納付が必要です。1月1日に日本国内に不動産のある市区町村へ「納税管理人申告書」を提出します。

 地方税の納税管理人の申告については、各市町村のホームページなどでフォーマットが用意されているので参考にしてください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)