【No456】令和6年度税制改正大綱 ~ 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長

 令和6年度税制改正において、中小企業事業再編投資損失準備金制度が拡充・延長されます。改正のポイントは以下のとおりです。

➀現行の中小企業事業再編投資損失準備金制度について、一定の措置を講じた上でその適用期限が3年延長されます。

②成長意欲のある中堅・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、グループ一体となって成長していくことを後押しするため、複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行70%から最大100%に拡充し、据置期間が現行の5年から10年に延長されます。

1.制度の概要と改正内容

(1)現行制度の概要(中小企業等経営強化法)

 中小企業者(注)のうち、令和6年3月31 日までに事業承継等事前調査(実施する予定のDD※の内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けたものが、株式取得(購入による取得に限る)によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です(措法55の2①)。

※DD(デュー・デリジェンス):M&Aを実施するにあたって、買手企業が売手企業に対して、財務や法務の状況について詳細に調査すること。

 この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入されます。

(注)中小企業者とは、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって租税特別措置法の中小企業者に該当するもの。

【損金算入の要件】

①青色申告書を提出する中小企業者が

②令和6年3月31日までに

経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項が記載された)の認定を受け

④他の法人の株式等を購入により取得し(取得価額が10億円を超える場合を除く

⑤事業年度終了の日まで引き続き有している場合に

⑥その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積立てたとき

【益金算入の要件】

①その株式等の全部又は一部を有しなくなった、帳簿価額を減額した場合等において、中小企業事業再編投資損失準備金を取り崩したとき

事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間で、その経過した中小企業事業再編投資損失準備金残高の均等額を取り崩したとき

(2)現行制度の改正内容

①その事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結している場合には、本制度を適用しない

②準備金の取崩し事由に、株式等の取得をした事業年度後にその事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結した場合を加え、その事由に該当する場合には、その全額を取り崩して益金算入する

③中小企業等経営強化法の経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る。)の認定手続について、その事業承継等に係る事業承継等事前調査が終了した後(最終合意前に限る。)においてもその経営力向上計画の認定ができることとする運用の改善を行う。

④適用期限を令和9年3月31日まで3年延長する。

(3)新制度の概要(産業競争力強化法)

 中小企業事業再編投資損失準備金制度について、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間に産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)であるものが、その認定に係る特別事業再編計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をし、 かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が100億円を超える金額又は1億円に満たない金額である場合及び一定の表明保証保険契約を締結している場合を除く。)において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額に次の株式等の区分に応じそれぞれ次の割合を乗じた金額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる措置を加える

① その認定に係る特別事業再編計画に従って最初に取得をした株式等 90%

② 上記①に掲げるもの以外の株式等 100%

 この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から10年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入する。

出典:経済産業省 令和5年12月 「令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について」

2.適用時期(期限)

 現行制度は、令和9年3月31日までに経営力向上計画の認定を受けた株式等の取得に対して適用されます。

 新制度は、産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間に同法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた株式等の取得に対して適用されます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)