【No571】次世代国税システム「KSK2」移行に伴う実務対応

令和8年9月24日、国税庁の次世代基幹システム「KSK2」が本格稼働します 。これに伴い、9月中旬にe-Taxが最大5日間全面的に停止するほか 、e-Taxの接続仕様変更により社内のセキュリティ設定を変更しないと電子申告ができなくなる深刻なリスクが潜んでいますのでご注意ください 。

1.システム更改のポイントと実務への影響

今回のシステム更改は、国税庁が「紙ベースからデータ中心の事務処理」へシフトするための歴史的な大刷新です。これに伴い、書面・電子問わず実務インフラが大きく変更されます。

項目 システム更改前 更改後 影響
e-Taxの接続IP 固定IPアドレス(接続先を特定可能) 動的IPアドレス(非公開) セキュリティ機器でIPアドレス制限をしている場合、接続不能に
書面申告の「控用」 複写式等の様式が配付、受領印あり 「控用」様式の配付廃止 紙提出の場合、事前に自社でコピーを取る運用が必須に
申告書の配色 カラー刷り(緑や茶などの文字枠) 原則白黒(モノクロ)化 帳票の印刷・視覚的な確認フローの変更
所得税徴収高計算書(納付書) A4三つ折り・複写式 A4サイズの「単票式」 番号体系がお問い合わせ番号(13桁)に変更。手書き不要に
給与所得の源泉徴収票 A5サイズ(コンパクトサイズ) A4サイズに拡大 従業員への交付封筒や郵送用資材のサイズ見直しが必要

2.誰に影響があるのか

対象となるのは、「すべての納税者」が対象ですが、特に以下の条件に当てはまる企業、事業者は事前に対策を講じなければ実務が完全にストップしてしまうのでご注意下さい。

①9月中旬~下旬に申告・納付期限がある企業

9月10日期限の源泉所得税の対象者や、9月決算法人の中間申告、3月決算法人の予定申告などを行う企業

地方税の基幹システム(eLTAX)も国税と同時に大規模更改を実施するため、国税と全く同じ期間に全面的にサービスが停止します。地方税の申告、キャッシュレス納税も一切利用できなくなりますのでご注意ください。

②社内ネットワークのセキュリティが厳重な企業

社内ファイアウォールやUTM(総合脅威管理)等で、e―Taxの接続先を「特定のIPアドレスのみ許可」に制限している企業(主に中堅・大企業、TI・総務部門)

③今なお「紙(書面)」での申告や、紙の納付書を使っている企業

複写式の申告書や納付書を税務署から取り寄せて。手書きや郵送で処理している企業

手元にある従来の複写式納付書についても経過措置が設けられており、令和10年9月頃まではそのまま引き続き税務署や金融機関の窓繰りで使用可能です。慌てて破棄せず順次新しい単票式のものに切り換えていけば問題ありません。

3.実務上の「落とし穴」と対策

落とし穴① 固定IPアドレス廃止による「9月24日朝の接続エラー」

企業のIT部門は、社内システムから外部へのアクセスを保護するため、e-Tax接続先の「固定IPアドレス」をファイアウォールに登録して通信を通しています 。 しかし更改後は、e-Taxの接続IPが接続ごとに変わる「動的IPアドレス(非公開)」に変更されるため、設定をそのままにしていると9月24日朝から「電子申告ソフトが国税庁と通信できない」という最悪の通信遮断事態が発生します 。

対策:今すぐ社内のIT・情報システム部門、あるいは保守管理会社に対して、通信許可のルールを「固定IPアドレス指定」から、「URL(ドメイン)による接続許可(例:*.e-tax.nta.go.jp)」へ変更するよう依頼し、接続テストを実施してください 。

落とし穴② 5日間の完全停止による「申告遅れ=加算税リスク」

データの移行作業に伴い、令和8年9月19日(土)午前0時〜9月24日(木)午前8時30分までの約5日間、e-Taxおよび地方税のeLTAXのすべての機能が終日停止します 。 さらに、9月26日(土)も終日メンテナンスのため利用できません 。 この期間中は、電子申告はもちろん、納税、メッセージボックスの確認も一切行えません 。

対策:9月中旬から下旬に期限を迎える手続きがある場合は、「ギリギリに送信すればいい」という考えを捨て、必ず9月18日(金)までにすべてのデータ送信および電子納税を完了させる前倒しスケジュールを組んでください 。

落とし穴③ 落とし穴③申告書「控用」の廃止に伴う、融資用エビデンスの紛失

税務署窓口へ紙の申告書を提出する際、これまでは「控用」に受領印(収受印)を押してもらって保管し、金融機関からの融資の際に「申告のエビデンス」として提出していました 。 新様式からは「控用」自体が廃止されるため、そのまま提出すると手元に何も残りません 。

対策: 書面提出をする場合は、「提出前に必ず社内でコピーを取る」運用を徹底する必要があります 。また、電子申告を行っている場合は、e-Taxから送信後に発行される「受信通知(受付結果)」をPDF等で確実にデジタル保存・管理する社内ルールを再整備してください 。

4.経理担当者への実務アドバイス

①IT部門・システム会社への設定変更依頼

セキュリティの設定変更(e-Taxへの接続を「IPアドレス制限」から「URL制限」へ変更)を社内のネットワーク担当者へ今すぐ相談してください 。

②9月申告・納付スケジュールの前倒し調整

9月19日〜24日の停止期間をカレンダーに登録し、経理メンバー全員で共有します 。特に、月次の源泉所得税の電子納税などをこの期間内に行うことはできないため、18日(金)までに完了する業務設計をしてください 。

③源泉徴収票のA4化に伴う、配付用資材の点検

年末に従業者へ交付する源泉徴収票のサイズがA5からA4に変更されます 。これまで給与明細等と同封して郵送や手渡しをしていた場合、封筒に入らなくなる可能性があります 。専用封筒の手配や、WEB明細(電子交付)への切り替え検討を進めてください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)