【No181】消費税の総額表示について

 令和3年4月1日より、消費税の総額表示の義務化が始まります。「総額表示」とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う消費税の課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含みます。)を含めた価格を表示することをいいます。

 消費税の課税事業者となっている医療機関においては、自費診療や予防接種・診断書作成料・物品販売などについて、それらの料金を表示する場合に「総額表示」をすることが義務付けられます。

 なお、消費税の免税事業者は、取引価格(売上)に消費税は課されませんので、「税込価格」「税抜価格」といった概念が存在しません。消費者が最終的に支払うべき金額を表示することが適正な表示となります。

(消費税の基本的な仕組みについてはNO.163をご参照ください。)

1.対象となる取引

 消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときには総額表示が義務付けられます。

 事業者間での取引は総額表示義務の対象とはなりません。

 総額表示の義務付けは、不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示、チラシあるいは商品カタログにおいて、「あらかじめ」価格を表示する場合を対象としていますので、医療機関においては不特定多数の患者や利用者に対して価格表示を行う場合が該当します。

 医療機関が他の事業者に対して、見積書、契約書、請求書等を作成する場合には、総額表示義務の対象とはなりません。

2.具体的な表示例

 例えば、次に掲げるような表示が「総額表示」に該当します(例示の取引は標準税率10%が適用されるものとして記載しています。)。

・11,000円

・11,000円(税込)

・11,000円(税抜価格10,000円)

・11,000円(うち消費税額等1,000円)

・11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)

[ポイント]

 支払総額である「11,000円」さえ表示されていればよく、「消費税額等」や「税抜価格」が表示されていても構いません。

 例えば、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当します。

 なお、総額表示に伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えありません。

3.対象となる表示媒体

 対象となる価格表示は、商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、インターネットホームページ、新聞・テレビによる広告など、消費者に対して行われる価格表示であれば、それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず、総額表示が義務付けられます。

 医療機関においては、院内掲示やホームページ等で価格表示を行っている場合には、総額表示の対象となります。

 なお、口頭による価格の提示は、これに含まれません。

4.価格表示を行っていない場合

 総額表示が義務付けられるのは、あらかじめ取引価格を表示している場合であり、価格表示がされていない場合にまで価格表示を強制するものではありません。

国税庁「「総額表示」の義務付け」

財務省「消費税の総額表示義務と転嫁対策に関する資料」

(文責:税理士法人FP総合研究所)