【No192】後期高齢者の窓口負担割合の見直しについて

 令和3年6月4日の通常国会において「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決されました。この法案の中から「後期高齢者の窓口負担割合の見直し」について取り上げます。

1.現在の窓口負担割合

 それぞれの年齢層における窓口負担割合は以下のとおりです。

 ・75歳以上の者(後期高齢者(※))は、1割(現役並み所得者は3割)。

 ・70歳から74歳までの者は、2割(現役並み所得者は3割)。

 ・70歳未満の者は3割。6歳(義務教育就学前)未満の者は2割。

 (※)後期高齢者のうち、住民税が課税される課税所得額(各種所得控除後の所得額)が145万円以上ある被保険者及びこの方と同じ世帯に属する被保険者は現役並み所得者として判定され、3割負担となります。ただし、3割負担と判定された場合でも、収入額に応じて市区町村に申請することにより、1割負担に変更することができます。

厚生労働省「医療費の自己負担について」

2.趣旨

 令和4年度(2022年度)以降、団塊の世代が後期高齢者となり始めることで、後期高齢者支援金の急増が見込まれる中で、若い世代は貯蓄も少なく住居費・教育費等の他の支出の負担も大きいという事情に鑑みると、負担能力のある方に可能な範囲でご負担いただくことにより、後期高齢者支援金の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らしていくことを目的としています。

 ただし、その場合でも、何よりも優先すべきは、有病率の高い高齢者に必要な医療が確保されることであり、他の世代と比べて、高い医療費、低い収入といった後期高齢者の生活実態を踏まえつつ、窓口負担割合の見直しにより必要な受診が抑制されるといった事態が生じないようにすることが不可欠である、ということも付け加えられています。

3.所得基準

 課税所得額が28万円以上かつ年収200万円以上(※)の方を2割負担の対象に変更します。

(※)・単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上。また、収入基準額は、税所得額をもとに年金収入のみの世帯を前提に計算。(対象者のほとんどが年金収入であるため、年金収入のみで収入基準額を計算)。

・収入基準に該当するかどうかは、介護保険同様に「年金収入とその他の合計所得金額」が年収の下限の額を上回るかで判定。

 

厚生労働省「2割の対象となる所得基準の考え方」

4.施行日

 施⾏に要する準備期間等も考慮し、令和4年度後半(令和4年10月から令和5年3月までの各月の初日を想定)で、政令で定めるとされています。

5.配慮措置

 長期頻回受診患者等への配慮措置として、2割負担への変更により影響が大きい外来患者について、施行後3年間、1月分の負担増を、最大でも3,000円に収まるような措置が導入されます。

厚生労働省「令和3年2月12日 第140回社会保障審議会医療保険部会」

(文責:税理士法人FP総合研究所)